1922年テッサロニキで生まれたブズーキ弾きで作曲家の>アポストロス・カルダラスの作品を歌い綴ったエレーニ・ツァリゴプールの新作となります。カルダラスが1990年に亡くなって数年後、ツァリゴプールは、カルダラスの息子であり、やはり作曲家として活躍するコスタス・カルダラスをとともに>1993年作アルバムを残していました(エレーニとして4作目)。そんなこともあってか、エレーニ・ツァリゴプールにとって、レベーティカとライカの結節点において、ヴァシリス・ツィツァーニスらと並びつつ、また一つ異なるトーンと情感を紡いだ作曲家、アポストロス・カルダラスの存在は特別なものだったようです。
「わたしは彼の音楽に魅了され、催眠術にかかっているような気がしています。さまざまな音楽手法をミックスする手際もさることながら、歌詞に対する繊細さ、意味深い歌の言葉を親しみのあるメロディー、曲想に溶け込ませるその手際は最たるものでしょう…」というようなことを、エレーニ・ツァリゴプールは言っています(完全意訳)。
そんな、アポストロス・カルダラス曲を歌う、という、長年の夢を果たしたのが本作、去年の夏頃から幾つかの曲が配信され、CDとして年末にリリースされています。エレーニ60歳のアルバムとして(比較的ベビー・フェイスなので、まだ50代半ばぐらいかと思っていましたが)、87年デビュー以来リーダー作として15枚目となる本作でした。
グリーク・ロック出身の>ニコス・ポルトカーログル、サウンド・エンジニアにしてエッセイストでもある作曲家、>ヨルゴス・アンドリウも参加しデュオで歌った2曲も含め、すべての曲がカルダラス作であり、これまでPOPやロック調の作もあったエレーニですが、その中高音域で独特に伸びる浮遊感ある節まわし、どこか古風な印象も漂う彼女の歌声が、カルダラス曲を得て、これまで以上に魅力的に響いている本作です。
特に “スミルナの大火” に材を取ったと思しき、ヨルゴス・ダラーラスも歌っていたカルダラス曲の本作ラスト・ナンバー「スミルニ・マナは燃えている」など、ライカ黎明をもっと遡り、スミルナ派レベーティカの胎動さえ感じさせる演出に、何だか、感動してしまったのでした。
そのダラーラス版「スミルニ・マナは燃えている」が収録されているのは、ハリス・アレクシウのデビュー作でもあった72年の共作アルバム>“ミクラ・アシア”、あの名作もまた、アポスタス・カルダラスが古い詩に曲をつけ、アレンジもつとめたアルバムだったことを思い出します。
1 Νύχτωσε Χωρίς Φεγγάρι 5:07
2 Γιατί Γλυκιά Μου Κλαις 4:19 Feat. Níkos Portokáloglou
3 Αργά, Είναι Πια Αργά 3:34
4 Ρίχτε Στο Γυαλί Φαρμάκι 3:49
5 Η Φαντασία 4:34
6 Ας Παν Στην Ευχή Τα Παλιά 4:32
7 Ένα Αστέρι Πέφτει Πέφτει 3:55
8 Εγώ Ποτέ Δεν Αγαπώ 3:51
9 Απ’ Τα Ψηλά Στα Χαμηλά 4:07
10 Πάλι Κι Απόψε Σκεφτικός (Άνθρωπε) 3:56
11 Αν Είναι Η Αγάπη Έγκλημα 4:51 Feat. Giórgos Andréou
12 Πήρε Φωτιά Το Κορδελιό 3:07
13 Η Σμύρνη Μάνα Καίγεται 4:09