DIMITRIS MYSTAKIDIS / MORSO

ディミトリス・ミスタキディス〜1970年テッサロニキ生まれ、80年代ギリシャのレベーティカ復興ムーブメントの中、16歳で独学のギタリストとしてデビューしたそう。後年、ミュージシャンとして稼いだ自己資金で音楽院に入学、引き続きギリシャ音楽を学んだ後(〜現在では、マケドニア大学の大学院教師も務めているそう)、当店で人気の高い故ニコス・パパゾグルやテッサロニキの作曲家、サナシス・パパコンスタンティヌウらと交わり共演することで、本格的にデビューしました。
最初のアルバムは1998年、ヴォーカルに同郷、テッサロニキ出身の女性歌手(当店で人気の高い)マリオをフィーチュアー、その後、作曲家(当店で人気の高い)ヴァシリス・フローロスのファースト&セカンド&サードにも参加。そのキャリアはギターに長けた歌い手とし、一貫して古いスタイルのレベーティカを独自の解釈で演じることに費やされて来たんじゃないかと思います。
本作は2022年12月リリースの8作目(うち共同名義2作)となるアルバムで、レベーティカをベースにヴィザンティン歌謡、あるいはディモーティカ等の感覚を加味し、自ら書き下ろした7曲を収録。加えて、アレクサンドロス・エマヌイリデス(07年デビューのSSW)が、4曲の新曲を提供していることも変化といえば変化、これまでにないことです。
また、音楽面の変化として(前作に続いて)ドラムス&ベース、そしてシンセ等(音響的使用)も含み、これまでになく手の込んだ編成を聞かせているのも事実。とは言え、全体として、この人ならではの音感、空気感にそう変わりなはく、ブズーキ、生ギター、ツァンブーナ(バグパイプ)、クラリネット、ネイ、ジウラなどの地中海的な器楽編成がエレキギター、ベース、ドラムスと対話しつつ、レベーティスらしいダウナーな情感を引き出しています。
そして、エレーニ・ヴィターリとマーサ・フレンヅィラ(ともに当店で人気の高い女性歌手)をゲストに招き、1曲づつ歌っていることも嬉しい限り。
というわけで、この人なりのトーンやカラーに変化はないものの、耳をソバ立ててしまう場面も多いところ、いちファンとして、聞いていて嬉しくなってしまったこの新作、当店新入荷ベストテンにて9点つけていましたが、やっぱり10点ということに変更させていただきましょう、ね。
というようなことはさておいて、7曲の自作曲の歌詞内容に関して、そこでは、社会的暴力や不正、ジェンダー差別、外国人排斥についてのテーマを盛り込み歌っているとのこと。 ミスタキディス自身、周囲で起こり続けている理不尽なことに対する怒りと哀しみを歌わずにはいられなかった、としています。が、ラスト曲では、世間の無関心に眉をひそめつつも、「もしかしたら、すべて、自分が間違っているのかも知れない?」という自問自答を、オールドタイミーなスウィング仕様で、これまでになく陽気な歌い口で聞かせているのでした…。何だか、意味不明ですが、シリアスな意味合いの歌を綴ったことへの照れ隠し?のようにも聞こえて、そういうところ、やっぱり、信頼できる歌い手かな、と。

1.Geraki 04:52
2.Skytali 04:32
3.Ahortago skyli 02:58
4.Aima kai krasi – Martha Fritzila 04:28
5.Apo mikri 04:28
6.Adiko kormi 03:21
7.Oneira dolaria 03:20
8.Moirasma – Eleni Vitali 03:59
9.Otan tha feygo 03:06
10.Monologos theou 03:52
11.Ti trehei sto Pagkrati? 03:08

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