RASMEE / THONG​-​LOR COWBOY

「タイの東北部、イサーン地方のモーラム楽団を率いた父のもと、幼い頃から歌っていたというラスミー・ウェイラナ、17年のデビューから19年まで、毎年リリースしていたCD3作は、達者なモーラム唱法を活かしながら、いかにもオルタナティヴなタイ音楽を目指す意欲的な3作だったと思う。が、どうして知り合ったのかは不明だけど、ニューオーリンズの新世代ジャズ歌手&プロデューサーだというサーシャ・マサコフスキーとの共同作業により生まれ出たこの新作、おそらくラスミー自身が目指していた新たなタイ音楽の完成、と言ってイイだろう。ケーンやピンといったモーラム常用の伝統楽器を溶かし込んだ、マサコフスキーのシンセ&プログラミングによる完成度の高いバッキングから浮かび上がる、少しカスレて物語るようにも聞こえるタイ伝統由来の節まわしが、実に新鮮に響く。時にソウルフルに、時にジャジーに、そして、時に完璧なモーラム・マナーにおいて歌い上げられた全10曲、前3作の試行錯誤を経て辿り着いた名作と言ってイイ。」
〜と、当方MM誌輸入盤欄の紹介文をそのまんま、無断転載させていただきました。なんだか、すみません!加えて、円安とはいえ、高くってすみません!
でも、2022年MM誌ワールド・ミュージックBest 10 にて2位となりました!

>こちらでも紹介されました(無断リンク陳謝&感謝)!

1. Indigo 3:01
2. How Don Ta 4:42
3. Thong – Lor Cowboy 6:43
4. Chomsuan 5:03
5. Only You 3:56
6. I Wanna Love You 4:57
7. Lam Duan 5:12
8. Maya 2 3:18
9. Lullaby 4:21
10. Beauty of Loneliness 5:30

*扱いが雑なのか、CD盤面に多少スリキズがありますが、再生可能です(当方プレイヤーにて)。

 

★すみませんagain!以下、当方が時々土曜の夕方とかにボソボソやらせていただいているNHK AMラジオの小コーナーで、このラスミーを紹介した際の台本原稿です。よろしく、どうぞ、

「タイ北東部、イサーンから登場したオルタナティヴな伝統歌手」

オルタナティヴという言葉は、昔からロック・ミュージックの世界でよく使われる言葉ですが、要するに、既存の音楽スタイルとは異なるスタイルで演奏されたロックに対して使われる言葉でした。

まあ、ロックの世界では、そのオルタナティヴ派が、逆に主流になってしまって以降、21世紀この方、あまり使われるなくなりましたが、でも、このタイの女性歌手、ラスミー・ウェイラナは、2015年、32歳の時に最初のCDを発表して以来、誰とも似ていないタイ歌謡、タイ北東部の伝統を継いだモーラムを歌い続けることにおいて、まさにオルタナティヴな存在だと思います。

それでは、一曲聴いていただきますね。
ラスミー・ウェイラナ、2年前のシングル曲、「ダオ・ドゥング・マイ」です。

△こちら配信のみのシングル・トラックです。

どうでしたか?
タイ北東部のイサーン地方や、そのイサーンと国境を接するラオスに住まうラーオ族の伝統から生まれたとされるモーラムを、まさにオルタティヴ・ロック風のバックを従え歌ってくれた曲じゃないかと思います。
というのも、このラスミー嬢、タイ北東部、モーラムの本場、イサーン地方出身であり、彼女の父親はモーラム楽団のリーダーだったそうで、幼い頃から歌って来たというから筋金入りです。

疲れ果てたけど、歩き続けなければならない、夢を実現するために懸命に働こう、私の住むこの惑星では、たくさんお金を稼ぐことがイイこととされて、それは幸せをもたらす…ええと、それから、ええと、
登りつめることだけが人生だとしたら、すべて崩れ落ちてしまった時、どうしたら奮い立ち、やりなおせるのですか?
よーく考えて、愛、夢の惑星、あなたを失望させるかも知れないもの、すべての苦しみ、すべての悲しみ、もう全部、さようなら、どうして、もう一度やりなおせないの?

と、こんなことを歌っていました。

それでは2曲目、ラスミー・ウェイラナ、今年なって出たばかりの新作CDから、お聴きいただきます。
曲名は、“チョムスアン”

こちらは、古いモーラムのスタイルを生かした曲ですね。
例えば、日本で民謡的な歌い口や節まわしが演歌に吸収され大衆化したように、モーラムもレコード時代以降、その歌の感触を残しながら、歌謡曲化していったんですね。
でも、この曲では、日本でも、雅楽などで使われる竹を束ねた管楽器、笙の、その先祖ともされるケーンの演奏をバックに、淡々と語るような節まわしが、歌謡曲化する以前のモーラムの雰囲気も彷彿とさせてくれます。

が、しかし、ケーンの音色はどこか無機質だし、心ここにあらずという雰囲気でリフレインされる間奏パートのラスミーの歌声は非モーラム的でした。
そして、カエルや虫の声のする中、低音でうねるベースも、水の中から聞こえてくるような、ぼやけた音だったし。

なので、この曲、古いモーラムの演奏スタイルを演じながらも、一つ一つの音の感触が、やっぱり、オルタナティヴですね。さまざまなパーツを組み合わせ、昔のモーラムとは異なる、ストレンジな効果を生んでいます。

魚がいるときは、彼女を旅に連れ出してください。
魚がいるときは、彼を旅に連れ出してください。
長老を連れて庭の木々の周りを散歩してください。
すべて美しく、香りがよい。

庭に花が咲くのを見る。
彼女を散歩に誘い、花の匂いを嗅ぐ。

新しい満月
妹がそばにいたがる
頼むから、ロバを蒸し焼きにしないで、
2つの人生を共に生きましょう
美しい花があふれて
さあ、新しい夜を一緒に、
ロマンチックな抱擁…

こんな意味のことを歌っていたと思います。いつものことですが、訳が間違っているだけかも知れませんが…ちょっと、わけがわかりませんね。

都会へ出稼ぎに行ったきり帰って来ない恋人への恨みをはじめ、生活苦を訴えたり、行政や社会への批判なども歌われたり、元来、モーラムの歌詞内容は何でもあり、ヴァラエティに富んだものだそうですが、ラスミーの歌はその内容も、従来のモーラムとは、全然違うんじゃないかと思います。

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