もう、ジャケットでグッと来ますね、蓄音機のまわりにうら若き美女5人!それでもってグループ名が “スミルナ”と来た!
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スミルナと言えば、既にご承知の通り、トルコはアナトリアの港湾都市イズミールのギリシャでの呼び名(もとは古代ギリシャの植民市だった)。オスマントルコとギリシャの間で1923年に取り交わされた住民交換(互いの国土に住まうギリシャ正教徒とイスラム教徒の強制移住)によって、多くのギリシャ系住民がギリシャに帰還、その際、持ち帰られたスミルナの音楽が当時ギリシャで興隆しつつあった最初の大衆音楽、レベーティカの成熟に大きな影響を与えたとされています。
そしてもうひとつ、スミルナとはギリシャ神話に登場する女神の一人(アドニスの母、ミューラー)のことですが、この女神、アフロディーテよりも美しいと称されたがためにアフロディーテの呪いを受けることになりました。ま、それだけ、美しい5人組、ということに…
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というわけでスミルナ、クレタに集ったうら若き女性ばかりの5人によるヴォーカル&インスト・グループ、2010年結成、12年に“SMYRNA” を録音するも(=ギリシャ国内ダウンロード& yourtube での提供のみ)、本作が実質デビュー・アルバムとなります。カリア・カンポリ(カヌーン)、エレフセリア・コルリア(ギター)、ペニー・パパコンスタティーヌ(リュート)、エリーニ・シスカキ(ヴァイオリン)、ハラ・ツァルパラ(アコーディオン)とそれぞれ主だった楽器を担当しつつ、ほか、打楽器や管楽器を持ち替え演じながら全員で歌います。その歌唱&演奏力の高さは一聴で納得ですが、そのコーラス・スタイルのギリシャ音楽一般に於ける特異さ(ビザンティン音楽にもコーラスはありますが、このスミルナの合唱とは似ても似つかないもの、どちらかと言えば、各地民謡のシンプルなコーラスをヒントに発展させた風)、まるでブルガリアの小編成女声ポリフォニーのような合唱を聞かせます。ま、そのブルガリアもギリシャ同様、オスマントルコに500年間領有されたのですから推して計るべし、というか、そのフォークロアに同根のリズムやメロディーはあるわけですね。
加えて、このスミルナ、グループ結成後この4年間に渡り、アナトリア、カッパドキア、トラキア、マケドニア、アルバニア、イオニア海、エーゲ海の島々、そしてスミルナのフォークロアを学び、その音楽性を吸収して来たそうですから、ある意味、各地のトラッドをミクスチュアーした “ネオ・トラディショナル” 音楽を実践しているわけです。〜その意味でも、こんなギリシャ音楽聞いたことない!というのは当然かと…。
オリエントな弦アンサンブルがクロスし生みだす変拍子リズムと、うら若きそのメリスマに満ちた歌声が紡ぐ哀愁メロディー、スミルナ2014年作、是非お楽しみ下さい!
△参考
△ダウンロードのみのファーストから