SELIM GULER / SENSIZ

ズイブン昔、一度は入荷したものの、その後、全然入荷しなかった1枚、ケマンチェ / チェロなどの擦弦楽器奏者のセリム・ギュレル制作のトルコ古典歌謡&タクシーム・インスト作品です。セリムは1961年イスタンブール生まれ、大学でケマンチェの教師を務めるかたわら、イスタンブールの州立トルコ音楽アンサンブルの芸術監督 / 国立トルコ音楽アンサンブルのサブディレクターも務めているそう。かと思えば、ブルハン・オチャルのグループに参加したり、その専門性を買われ、様々なレコーディングの場に招かれケマンチェを弾いてきたようです。
そんなセリム・ギュレルが、オスマントルコの時代から受け継がれてきたトルコ古典 / 伝統音楽の精髄をここで再現しようという意図を感じさせるアルバムがこちらです。
いわゆるサナートと呼ばれるポピュラー音楽的な古典歌謡ではなく、>こちら、ALATURKA / KALAN の同じく2014年の作品 “GIRIZGAH” に通じるような(どちらが先かは判じかねますが)、基本、古典 / 伝統音楽の枠の中で、現在の自分たちの感覚を生かそうとするような、そんな制作姿勢を感じさせるアルバムとなっています。が、”GIRIZGAH” と異なるのは、より伝統スタイルに忠実な楽器編成になっていること、あるいは、トルコ伝統音楽に内包されるかたちで受け継がれて来たクルド系の歌謡 / 器楽演奏曲もとりあげられていること、そして、セリム・ギュレル自ら演じるケマンチェによるタクシーム(古典旋法に則った即興)や、カヌーン、ウードそれぞれの奏者のソロをフィーチュアーしたタクシームによるインストを挟んだ構成になっていること、でしょうか。
だからどちらが上、ということではなく、”GIRIZGAH”を愛聴されている方には、是非こちらも、ということですが…。
そして、静謐、繊細、古風でありながら、独特の哀感というか、諦観というか、寂寞というか、そうした風合いの音色をソロ or アンサブルにおいて漂わせる、セリム・ギュレルのケマンやチェロの音色の素晴らしさが聴きどころの一つであることはもちろん、加えて、ディレック・チュルカン、ヤプラック・サヤールといった当店界隈で、かろうじて知られている女性歌手はじめ、おそらく古典の世界で歌い続けて来ただろう計6人参加の、おのおの1曲づつ歌う女性歌手たちの素晴らしさ(セリム自身も1曲歌っているので、歌曲は計7曲)、その飾りなくも格調高い洗練を聞かせる歌声、その典雅な哀切さを宿すそれぞれの節まわし、聴き応え充分です。超地味な作ですが、おすすめしたいと思いまス。

1. Kemençe Taksim / Selim Güler
2. Yine Mi Caydın / Melihat Gülses
3. Sensiz / Saz Eseri
4. Kanun Taksim / Göksel Baktagir
5. Her Şeyi Yaktım / Elif Güreşçi
6. Orada / Çiğdem Gürdal
7. Sen / Saz Eseri
8. Kemençe Taksim 2 / Derya Türkan
9. Unutma / Dilek Türkan
10. Benden Vazgeçemezsin / Çiğdem Gürdal
11. Hiç Mi Özlemiyorsun Beni / Yaprak Sayar
12. Ud Taksim / Yurdal Tokcan
13. Senden Bana Kalanları / Tuba Altınok
14. Ben Seni Düşünürken / Selim Güler
15. Seninle / Saz Eseri

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