それにしても、イイ顔になって来ました。いかにも頑固そうな、在仏ブールのオヤジ顔、年輪を感じさせます。お姉さんの歌ばかり聴いていると、やっぱりこういうイブシ銀の歌、聴きたくなるもんですね…。
南仏トゥールーズのマグレブ系二世ユニット、ゼブダのヴォーカル&作詞をつとめて来たフロントマン、マジッド・シェルフィ、10年ぶりのソロ新作アルバムです(3作目)。待たされました、ホント。
で、この10年間、マジッドは何をしていたかというと、04年に最初の小説を執筆してから07年に2冊目、共著を3冊はさんで、去年3冊目の小説を発表、その刊 “Ma part de Gaulois(わたしの中のガリア、とでも訳せるんでしょうか)” は仏でベストセラーと聞いていますから、人気作家になってしまった模様。そんな中、発表されたこのソロ新作、当然フランスでは大きな話題を呼んでいるようです(そうそう、それに、12年と14年にゼブダ再結成して、2枚のアルバムが出てましたね。というわけで、結構忙しそうな10年間)。
その小説の内容はともかく(良く知らないので)、なるほど、>前作に較べると、一聴ちょっと地味、でも、より歌う言葉を大切にした風に聞こえて、なんだか、一時期のボブ・ディランみたいな、そんな印象も…(って、自分きちんとボブ・ディラン聴いてませんから、あくまでも印象なのですが)。もともと、このマジッド・シルフィの寄って立つ音楽、アルジェリアのシャアビにしても、フランスのシャンソンにしても、歌う言葉が命の歌謡スタイルですから、その点では、前作と今作のあいだに大きな変化があるとは思いません。けれど、外国語の歌として、フツーに聴いていて、歌詞の意味がすんなり入って来ることもない当方としてみれば、結局、歌と演奏の関係において、演奏がやや背後に引いて、歌う言葉が際立つようなアレンジがされていると、そう感じるわけで、ま、歌詞内容はともかく、伝えたいことがある、という姿勢が伝わるのは確か。
それもそれとして、youtube にはアップされていませんが、前作同様、カビール系シャアビっぽい4曲の収録が良くて、はじめは、そっちの方に耳が行ってしまう、ということは、やはりありました。が、何回か聴いているうちに、全体を通して、う〜ん、やっぱりマジッドだなあ、と。シャンソンとしてもシャアビとしても、あるいは単なるフランス語の歌としても、全体として、沁みるものを感じた次第。変わらず、こういう男が信じるに足る男、という気がしてきました。どこが? どうして? と尋ねられても困るんですけど、言葉がわからなくてもわかっても、歌っていうものは、たぶんそういうことでしょう。
表題曲のタイトル “CATÉGORIE REINE” を直訳すれば “女王のカテゴリー” となりますが、転じて、“最高級品” とかいう意味になるんでしょうか?歌詞の意味はよくわかりませんが、フランスという階級社会で最下層に位置するだろう、マグレブやアフリカからの移民を代弁して歌う“最高級カテゴリー” の歌、この人らしいイロニーやユーモアに包まれた反骨を感じさせるのも、確かです。
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