…Polish, Lithuanian and Belarusian folk music
ポーランドの女声コーラス・トリオ、スタリのメンバーのふたり、バシア・ソヌギン&カシャ・カペラと、同じくポーランドの(普段は古楽をベースに即興を演じているというインスト・トリオ)“バスタルダ”(イタリア語名、意味は “ろくでなし”)の共演22年の作、初入荷です。
パヴェル・シャンブルスキー(クラリネット)&ミハウ・ゴルチンスキ(バスクラ)、トマシュ・ポクシウィンス(チェロ)に、スタリの二人が奏でるカンクレー(北欧のカンテレにも似る楽器)やヴァイオリンが加わって、スラヴィックでありつつ同時に北欧色も感じさせ、仄暗く端正でいて、どこか胸騒ぎを誘うような不協和音が余韻を引く即興的な演奏が、まず、印象的です。
“TAMOJ” という表題は「遠くはない、そこにある」という意味だそうで、互いに国境を接する3国、ポーランド、リトアニア、ベラルーシの国境地帯で、古くからの人の移動と出会いにおいて生み出された音楽の交わりをテーマにした、という本作にふさわしいタイトルですね。
ポーランドのウェブマガジンのインタビューに応え、「私は国境地帯を出会いの場として考えるのが好きです」と、バシア・ソヌギンは言っていましたが、なるほど、そこに線を引いて、隔たりを作って争うのではなく、出会うこと、そして交わって行くことが重要だ、とでも解せる発言でしょう。
とはいえ、どこまで国境地帯の民謡に忠実なのか、どこまで即興性を活かしているのかも不明な、飾るところのない歌と演奏が綴られたこの作品、決して親密さや融和といったところに着地するような音楽には聞こえないし、古謡の再現を目指したにしては、その音響的な自由は奔放に過ぎるかも知れません。
もしかしたらポーランドの、もう一つの国境の向こうのウクライナと、ロシアの状況が影を落としているのかも知れないなあ、とか、そんな風に辻褄合わせというか、憶測を巡らせることもできそうですが、ま、そういうことはともかく、少なくとも、これまで聴いてきたスタリとは一味違うその演奏と歌声に感じられる生々しさや、新鮮さに耳を傾けているだけで十分という気もします。モノクロ、コラージュ・ジャケの何だか寄る辺ない雰囲気も、内容に沿ったもの、かと?
1. Ty pójdziesz górą 05:22
2. там над пушчай / Tam nad puszczaj 03:49
3. Sady 04:39
4. Skudučiai 05:13
5. Granica / Pasienio / Hranicia 03:22
6. Wojenka 08:40
7. Dūno upė 03:34
8. Nim świt nastanie 04:43
Basia Songin – vocal, kankles, polish frame drum
Kasia Kapela – vocal, violin, kankles, frame drum
Paweł Szamburski – clarinet
Tomasz Pokrzywiński – cello
Michał Górczyński – bass clarinet