例によって、こちらもまた、ネット上に何の情報もないのですが(唯一UPされている本CDの関連記事?といえば、当方の昔のHPにおける “通りすがりのKさん” 09年ベスト10で1位を飾っているだけ、〜曰く「ウズベキスタン現地盤、超絶アシュク親父」とありました。謎は謎を呼びますが、流石Kさんということにも!?) 、〜で、その音楽スタイルからして、>こちらのCD=V.A. / O’ZBEGIM DURDONASI の内容に準じているものではないかと思っていますが、過日は判明したことには、”O’ZBEGIM DURDONASI” は、ウズベキスタンの中でも独特な文化を育んできたホラズム州の男性歌手達による古謡集、だったということで、こちらのタール弾き語り男性もホラズムの古謡を歌っていると思われます。
トルクメニスタンとの国境地帯ホラズムというところがどういうところかは知りませんが、古代からペルシャ、アラブ、モンゴル、スラブとさまざまな支配層の変遷を経た肥沃なデルタ地帯ということで、中央アジアの中でもペルシャ〜テュルク系の住民をベースに、古くから混血文化が育まれて来た雰囲気は伝わります。州都ウルゲンチは陸の港、交易の要衝として、あるいは12世紀から13世紀はじめにかけては、ホラズム・シャー朝の中心地として、当時、シルクロードのイスラム世界で最も栄えた都市だったということ。ウズベキスタンの中でもことに民謡や伝統歌謡の宝庫として有名であり、現地ポピュラー音楽の世界でも、ホラズム出身の歌い手が多く活躍していることは知られるところ。
そんなホラズムの伝統歌謡と思しき本CDを聴いてみれば、なるほど、ペルシャ由来の古典旋法マコームに則っているかのような端正さを感じさせると同時に、 “アシュク” と呼ばれてしかり、その吟遊詩人風弦楽器弾き語りの悠々とした歌い口の自由さも感じさせ、正直、サマルカンドあたりの正調ウズベク古典声楽よりも、その野趣、悠揚迫らぬ雰囲気にいっそうの魅力を感じたりもします。強いて言うなら、トルコ、アレヴィー教徒とかの古いアシュク、あるいは、トルクメニスタンを経てカスピ海を隔てた西の対岸、アゼルバイジャンの “ムガーム” なんかにも通じているかも知れませんね(加えて、なんだか伝統音楽が抑圧されていたというソヴィエト時代のウズベク歌謡の余韻を感じさせる曲もありますねえ、複雑です)。
とにかく悠々としていて超絶?スゴイ喉の持ち主でありながら(イラン古典のような洗練の極み、きめ細かさとはまた一つ違う)、どこか野趣のこもった弾き語りが、緩急自在なウズベクの弦&打アンサンブルの中に聞こえる素晴らしい一枚(曲によって生ストリングス付きオーケストレーションも)!ホラズムを代表する歌い手の一人であることは間違いないでしょう。08年リリース、音質OKなスタジオ録音です(ということで、今もって、インターネット世界に顕れない名歌手なんてザラにいるはず、と、信じている自分としては嬉しい発見となりました。で、先の引っ越しの際のデッドストック発見アイテムの一つなので、灯台もと暗し?棚卸しの方はいったいどーなっているんだ?ということにもなりますが)。もちろん現品限り!