昔の話ですが…、当方CD”FEELING FEELIN’ “を選曲させていただくにあたって、一番思い入れしてしまった歌手がこのドリス・デ・ラ・トーレでした。たった3枚のLPアルバム(うち2枚がロス・アルモニコスのヴォーカルとしての録音なので、実質的には本作のみがソロ・アルバム)&シングル録音数曲を残し、60年代半ばにスペインへ(そして後年マイアミへ)亡命してしまったドリス・デ・ラ・トーレ~何でも革命政府のお偉方の前で歌いたくないとボイコットしてしまったため、その後、歌い続けるのが難しくなったという話も聞きますが、真偽のほどはわかりません。
ただし、50年代後半から60年代にかけて、ハバナのナイトクラブでは人気の高かった女性歌手であり、“フィーリンの女王(というと今ではエレーナ・ブルケということになっていますが)”と呼ばれるほどだったにもかかわらず、キューバのエグレム社は頑なにこの人の録音の複刻をしない、という事実はあります。
本CDはマイアミに亡命したキューバ人関連の会社?がリリースしている、唯一のソロ名義アルバム59年録音の“TU DOMINAS” の改題同内容複刻CDということになります。ハバナのアルゼンチン人アコーディオン奏者兼編曲家率いる楽団による、いかにもフィーリンな演奏の中、時折ニヒリズムさえ漂う暗さをまとい、そしてナイトクラブ歌手らしい哀愁ムードもほどほどに、それでいて、どこかしら凛とした印象を残す不思議な歌声を聞かせてくれます。フィーリンです(1曲英語、1曲ロシア語の歌も披露…どうなっているんだか?)。オススメします。
*なお、スペイン VINTAGE MUSIC の>こちらのCDとは曲の重複はありません!なので、2枚揃えると、ほぼ、このドリス・デ・ラ・トーレの残した数少ない録音は揃ってしまうことになるのでした。
Composed by Eddy Gaytán