KlapYaHandzの音楽や映画を同時代として享受できることが、どれほどの奇跡なのかを思うと勇気が湧いてくる。チョッケツ、クメールHIPHOP!<空族 富田克也>
ラッパーたちはみんな自由で、Sok Visalはずっと笑っている。若いスタッフたちは忙しなく肉を焼いていて、Sreyleakは妹にすごく優しい──トゥオル・コークの夜、僕はこの最高の音楽を語る術をもちあわせていない。知ったような顔をしない、もっともらしい言葉を探さない。それが一番、難しい。<川田洋平(編集者)>
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ブギダウン・プノンペン!音楽が失われたカンボジアの地平に描かれたクメール・オリジナル・ヒップホップ!カンボジア・レペゼン、KlapYaHandz(クラップヤハンズ)草創期の熱いチューンを訳詞・解説付きでEMパッケージ化。ヒップホップ好き、アジア音楽好き、オリジナルな音楽が生まれる尊い瞬間を追体験したい全ての人に捧ぐ!!!!!!
RIN AWARDSで年間ベストアルバムにノミネートされたJuu & G. Jee『ニュー・ルークトゥン』に続き、OMK+エム+空族+STUDIO VOICE(アジア特集)連合が送るASIAN MUSIC必聴作!このKYHはクメール・ルージュによってレコードが焼き払われ音楽が消失したカンボジアにヒップホップという新しい種を撒き、文字通り「Doin’ Our Own Things」を実現したレーベルだ。ヒップホップにおいてはUS以外のレーベルに焦点が当たること自体が珍しく、本作は「カンボジアでヒップホップがどう受容され変容したか」を示すと共に「ヒップホップがどうアジアに広がっていったか」を捉えたエキサイティングなドキュメントになっている。
現代カンボジア・レペゼンにまで駆け上がったKYHだが、この『KYH Vol.1: The Cream Of The Crop, 2001-2011』はブレイクするまでの前史、創設者のソック “Cream” ヴィサルが徒手空拳で生み出した初期作品を厳選したものだ。ここにあるのはかつて70年代パンク・ムーヴメントや90年代テクノにあったような「やってやろう!自分のやり方で!」というポップ・ミュージックを更新してきた尊い瞬間に他ならない。
ポル・ポトから逃れたヴィサルは80年代初頭、亡命先のパリでヒップホップに遭遇し次に移住したアメリカでヒップホップの爆発を体験。その後、故郷プノンペンに帰還した彼が取り組んだのはUS産の単なるコピーではなく、かつて隆盛を誇ったクメール・ロックを含めた黄金時代のカンボジア音楽を取り入れた<クメール・ヒップホップ>の創作だった。ヴィサルは「親世代がノスタルジーとして聴くもの」だったシン・シサモットやロ・セレイソティアといった歌手をあえてサンプリングすることで戦火で断絶した世代ギャップを飛び越し、再び命を吹き込んだ(しかし当初は冒涜だと罵られることも多々あった)。
本作を聴いていると<クメール・ロック>のイメージも変わってくる。数あるコンピレーションを聞くと主に<西洋音楽の追随>に着目されていることに気付かされ、洋楽のカンボジア・ヴァージョンと見なされがちだが実はそうではない。カンボジアの伝統楽器を使いローカル・ヴァイブスを洋楽コンボ編成に落とし込んだ、タイでいうルークトゥン的なチューンも数多く存在するのだ(というかそっちの方が多い)。ヴィサルはむしろそんな<ありふれた>曲から土着固有のリズムや音色や歌の節回しを見つけ出し、今度はそれをヒップホップのフォーマットへと落とし込んでいる。過去を引用してフレッシュなものを生み出すヒップホップの手法をここまでダイナミックに実現した例は世界でも珍しいのではないだろうか?
リン「Hip Hop」に始まるこのコンピには、プノンペン・プレイヤーズ、クメール・ラップ・ボーイズ、ヤングスターズや今も影響力を持つラッパー、リーシャといった2010s世代にとってのレジェンド達が顔を揃え、クメール・ヒップホップ第一世代が存在した証が示されている。そして本作はKYHの立ち上げメンバーだった故アピンに捧げられている。
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注:レーベル名はDas EFXの「Klap Ya Handz」(1992)に因んでいる。過酷な内戦と圧政の末、感動した何ものかに自分の意志で拍手喝采することを忘れたカンボジアの同胞への応援メッセージだという。なおヴィサルさんはEPMDをはじめとするDef Squad勢の大ファンだった。
1. Rin – Hip Hop [2001]
2. Phnom Penh Playaz – Ride with Us [2002]
3. Aping – Ereva Chanoy [2005]
4. Aping – Sangsa Lek 1 (feat. Dina) [2005]
5. Khmer Rap Boyz – Berk Chak [2007]
6. Kelly – K. E. L. L. Y. [2007]
7. Pou Khlaing – Yeak (feat. Adda) [2008]
8. Yungsterz – Luk Ko Luk Krobey [2008]
9. Khmer Kid – Laut Doch Besdoung (feat. Lisha) [2010]
10. Lisha – Srok Sre [2008]
11. Nen Tum – Dey Srok Khmer [2011]
12. Yungsterz – A Yap [2011]
36頁ブックレット封入(日本語・英語訳詞/解説掲載)
選曲・解説:Sok “Cream” Visal
マスタリング・選曲協力:Young-G (OMK/stillichimiya)
装丁:高木紳介 (Soi48/OMK/EM Records)
Special thanks: 佐藤雄彦(俚謡山脈)、空族、STUDIO VOICE, Be-Wave
〜以上、メーカーインフォより