V.A. / KANTOLAR 1905-1945


オスマン朝末期となる18世紀の後半、イタリアからやって来たオペレッタの巡業劇団による歌謡やダンスがイスタンブールで大きな評判を呼びました。そして、トルコでも自前のオペレッタを生み出すことになります。それは、イタリア語のカンターレ “歌う”という言葉を元に“カント”と呼ばれることになりました。その最初の人気歌手は、トルコ生まれのアルメニア系女性、ペルーズ・テルゼキヤン、またの名をペルーズ・ハニムでした。本CDにも1曲だけ、20曲目に1905年頃の録音が収められています。やや雑音入の蝋管レコード音源ですが、その艶も愁いもある歌声を楽しむことができます。
カントの舞台は、トルコにおいて、女性が初めて主導権を持って歌い踊ることがことができた舞台となりました。挑発的なダンスや即興的なパフォーマンスを挟みながら舞台裏で、彼女達は作曲や構成もこなし活躍しましたが、その多くはアルメニア系、ギリシャ系、そしてルメリア系(イスラム化以前から、旧ヴィザンティン帝国のバルカン半島周辺に住んだ人々の子孫)の女性でした。その後、男性歌手もカントの舞台に上がるようになり、デュエットや掛け合いを演じ、加えて、オスマン帝国が終焉、トルコ共和国が成立するとトルコ人の女性歌手も人気を得るようになって行きます。
カントは当時として、オスマン古典声楽のマカーム旋法やトルコ民謡のカルシラマなどを吸収しつつも、それ以前の古典歌謡や民謡とは非なる歌謡であり、ギリシャ音楽のカラマティアノスやシルトスも吸収した混淆音楽でした。多くはトランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、トラップドラム、シンバルにギター類などの西洋楽器の伴奏で歌われていました。メインのショーが始まる幕間には、あの有名なイズミル・マルシュ(マーチ)が演奏されたことでも知られます。
そんな、イスタンブールの多くの男性達を魅了し隆盛を誇ったカントも、タンゴはじめ、チャールストン、あるいはフォックストロットなど、広い世界から押し寄せる流行音楽を演じる劇場に聴衆を奪われ、30年代初めには多くのカント劇場が閉鎖、衰退するかに見えました。が、30年代後半に至ると78rpm SPによるレコード歌謡として復活、ジュンブッシュ(フットレスバンジョーのような弦楽器)やウード、カルパラ(カスタネット)等の伴奏で、カントの女性歌手達によって吹き込みが開始され人気は回復、イスタンブール以外でも、より広く親しまれるようになり、ルンバや北米ジャズ、フォクストロットのリズムも取り入れ、40年代を通じて人気を保つことになります。本CDは、そんな20世紀前半のカントを代表する歌い手たちによる初復刻SP音源が並ぶ編集盤となります。ここに並んだ曲の数々は、あるいは、今日も盛況を維持するトルコ大衆歌謡、しいてはPOPミュージック全体のごく初期の揺籃と考えることも可能じゃないでしょうか?
小冊子風ジャケも、雰囲気あるイラストを配した美麗なものながら、詳しそうなライナーはトルコ語のみの表記で、ちょっと残念…
 
1 Zarife Hanım– Dilerim Sen Dahi Bir Zalime / Koşa Koşa, Yana Yana (1950’s)
2 Bayan Neriman Ve Beşiktaşlı Kemal– Bayan, Bana Bak Bayan (1940〜42?)
3 Bayan Neriman– Kara Kız (1940〜42?)
4 Necmiye Hanım– Gitti Yarim, Gitti Elden (1940’s)
5 Fahire Hanım Ve Dramalı Hasan– Karı-Koca Kantosu (1940’s)
6 Bayan Semiha– Kadın Şöför (1943-44?)
7 Mahmure Suat Hanım– Çapkın Sarhoş (1940〜42?)
8 Mahmure Suat Hanım– Prozit (1945?)
9 Seyyan Hanım– Daktilo (1937-40?)
10 Makbule Enver Hanım– Horoz Kanto (1932-33?)
11 Makbule Enver Hanım– Sarhoşum Ama Hiç Rakı İçmedim (1932-33?)
12 Bursalı Hamid Bey– Leblebici Kantosu (1932-33?)
13 Mahmure Şenses– Haydi Dostlar Rumba (1933-34)
14 Fahire Hanım– Saçlar Samur (1940-43?)
15 Mahmure Şenses– Bana Yan Gözle Baktı  (1933-34)
16 J. Hanım– Tavşan Köçek (1940’s)
17 Gülistan Hanım– Değirmenci Kantosu  (1904-05?)
18 Mahmure Handan Hanım– Rampa  (1936-37)
19 Şamram Hanım– Beyaz Gerdan  (1904-05?)
20 Şamram Hanım Ve Peruz Hanım– Falcı Çingene (1904-05?)
21 Şamram Hanım– Ah Ölüyorum Efendim (1904-05?)
 
 

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