ジンバブウェのライオン〜ナイジェリアにアフロビートのフェラ・クティがいたなら、ジンバブウェにはこの男、チムレンガ(=蜂起の意)ミュージックのイノヴェイター、トーマス・マプフーモありき〜闘病を経て発表した充実作、2010年の>”EXILE” から早5年、待たされましたねえ。が、期待を裏切ることのない作となりました。 “EXILE” で見せてくれた軽快さに加え、バンドサウンドとして、いっそうのしなやかさ、フットワークの良さを聞かせながら、マプフーモならではのレベルミュージック路線もキープ!とともに、どこか、老ブルースマンみたいな枯れた貫禄を感じさせて(若い頃から枯れていた人ですが、そのヴォーカル・スタイルの深化もまたジンバブウェらしさ、ショナ人らしさにつながって行きます)、まさに不屈ですね。
で、この新作70歳50枚目のアルバムになるそう(そんなにあったか!?)。録音は90年代末以降、活動のベースとなっているオレゴン州ユージンで大部分が録られた模様。メンバーには、弟ランスロット・マプフーモ(パーカッション&キーボード)、古株のクリストファー・ムチャバイワ(ベース)、そして04年以降参加の元ジグザグバンド(オリヴァー・ムトゥクジのバックバンド)のギタリストだったギルヴァート・ムヴァマイダ(素晴らしいショナ・マナー・ギター!)、そして90年代末から参加のムビラ(親指ピアノ)のチャカイパ・ムヘンベレほか女性コーラス、そこにUSサイドの白人系トランペット&トロンボーン、黒人系ドラマーが加わっています(〜で、このメンバーにより今年3〜4月、ジンバブウェ&南ア・ツアーを敢行しているとのこと)。
冒頭曲やラスト曲はじめ、98年の名作 “HONDO” を思わせるムビラ・フィーチュアーのチムレンガナンバーの数々や、ジンレゲエ・マナーの表題曲 “DANGER ZONE”、あるいは、チムレンガ(8分6拍子)にファンクやエレPOPのノリを加味した”HATIDI POLITICS”や “MUSIC”など、ヴァラエティに富んだ傑作であることは確か。ジンバブウェ、ショナらしい細分化されたポリリズムとどこか軽快ささえ感じさせるソロヴォイス&ヴァイタルなコーラス、あるいは、これまでになく開放的でダンサブルなチムレンガビートの中、マプフーモらしい一歩引いたクールな歌声を聞かせる新傾向ナンバーが、違和感なく並ぶ作と言えるでしょう(とうとうヴォコーダーを使った曲も1曲あり…)。USサイドのホーンズの配分やビートの強調も実に効果的だし、”新傾向曲” とは言え、決して自分のカラーを薄めるどころか強めていくマプフーモのある意味、スタイリッシュな音楽作法にも唸らされます。加えて、ミキシングが実に生々しい!ロウです。
ともあれ、先日入荷の>こちら、オリヴァー・ムトゥクジといい、このトーマス・マプフーモといい、やっぱりジンバブウェ音楽の底力というか、余裕の境地というか、ヴェテラン(2大巨頭)二人の新作2点、いや〜、アフリカは深い!と、またまた、思いを新たにさせてくれるわけですね。(当方見分けつかなかったのですが、CDRじゃないないのかな、とお客様からご報告が〜感謝。が、紙ジャケ&デジパックはキチンと印刷されています。)
マプフーモの現マネージャーとのコンタクトを取り持ってくれた本多千秋さんに感謝!