こちらも1970年結成、マルチニックのビッグ・バンド=カダンス・グループ、ペルフェクタの79年の2作カップリング復刻CDとなります。今年5月金曜、マルチニックの L’Appaloosa Arena で、50周年ライヴを開催したそうですから(2020年)、ま、大編成バンドのこと、メンバーの変遷も多かったと思いますが(有名なところでは、リーダーだった金管奏者、ミシェル・ゴドゾムや、後にソロで活躍することになるシモン・ジュラドの離脱もありました)、少なくとも、この度の50周年ライヴの面子のうち5人は、この79年当時のメンバーと残留組、結束の強いバンドと言うべきでしょうね。それはともかく、今聴き直してみると、このペルフェクタ、サルサあり、ファンクあり、そしてカダンス・マナーはもちろん、(マルチニックらしさ、というものは表立って聞こえませんが、そこはかとなくメロディーや歌に漂っているような…)、70年代末フレンチ・カリビアンの充実エンターテインメントぶりがキッチリ伝わって来るわけで、その演奏力の高さも相俟って、やっぱりマルチニックを代表するダンス・バンドの一つに数えるべきと再確認、聴き応えあります!
Perfecta
1 La Divinité 7:01
2 Angéla 7:25
3 Laisse I Passe 4:54
4 Baille Chabon 7:25
5 Constation 7:45
Inoxydablement Votre
6 Getting Out The Darkness 9:59
7 Il Le Fallait 7:30
8 Si Ou Pas Le Comprend 7:22
9 Falsaria 8:26
Alto Saxophone, Baritone Saxophone – Michel Gros-Desormeaux(=Michel Godzom)
Backing Vocals – Alex Bylon, Marius Priam
Bass – Vico Charlemagne
Congas – Dady Pulval
Cowbell – Raymond Bouttrin
Drums – Romain Pallude
Guitar – Jean Tuernal
Keyboards, Mixed By – Daniel Marie-Alphonsine
Layout – Daniel Le Noury
Lead Vocals – Jean-Paul Albin
Trumpet – Jérémy Rano, Joel Beauzile
Engineer, Mixed By – Henri Debs
<補足 カダンス>
“カダンス・ランパ” とは、ヌムール・ジャン・バティスト創始の”コンパ・ディレクト”に対抗するため、ライヴァル関係にあったウェベール・シコーが自らの音楽スタイルを名づけた言葉。基本、アコーディオン&サックス、そしてホーンズを前面に展開したコンパ・ディレクトと本質的には変わらないものの、セカンド・ドラムの導入により、安定したバス・ドラムと強調されるシンバル、ハイハットとカウベルが生み出すアップテンポなリズム感において、ウェベール・シコーはカダンス・ランパに名のもとに人気を得ます。
1970年代に入ると、コンパ、カダンス・ランパや、それに続くハイチの若手台頭を象徴する“ミニ・ジャズ・ムーブメント”の影響も流入、新たな音楽スタイル “カダンス” が(その多くが、Debs スタジオの制作において)グァドループを中心に流行、次々と新しいグループが世に出ました(Les Leopards, Selecta, La Perfecta, Les Aiglons, Les Vikings, Typical Combo,Les Gentlemen…)。ハイチ・スタイルを咀嚼した整理されたビートに、ビギンやマズルカなどのメロディーを援用しつつ、カダンスは、マルチニックやドミニカ島(ドミニカ共和国ではなく、英領ドミニカ島)も巻き込み、仏語圏カリブを席巻していきます。
並行して、ドミニカ島出身の音楽家達(Exile One, Grammaks…)が、グァドループを拠点に展開した “カダンス・リプソ” もカリブ圏内外で人気を呼びました。カダンス・リプソとは、カダンス・ランパとトリニダードのカリプソをミックスし生み出されたという70年以降のダンス音楽。カリブ海音楽として最初にシンセサイザーを導入、ソウル、ファンク、レゲエ等の要素も取り入れたその疾走感あるサウンドは(ソカの成立にも影響を与えたそうです)、カダンスと合流するかたちで、80年代のズーク大流行の伏線となりました。