オルケストル・トラディショネル・ドゥ・グアドループ 『黄金のビギン』
1966年暮れのある日、倉庫を改造したスタジオでラム酒を飲みながら一晩で録音されたという、素晴らしいハーモニーと野性美に満ちたグァドループ・メイドのビギン・アルバム復刻CD!トラディショナルなビギンからモダンなビギンへの過渡期をとらえた充実作です。新進ピアニストのアラン・ジャン=マリーと老練のクラリネット奏者ロベール・マヴーンズィ~このコンビの初録音となるも、二人のコンビネーションは完璧!トラディショナル・ビギンの枠を越えたピアノと、オールド・ビギンの哀愁を伝えるクラリネットが、違和感なく溶け合います。無名にして夭折した女性歌手、グァドループのベシー・スミス?マニュエラ・ピオッシュの参加も嬉しいところ。なお、このCD化に際して、1972年グアドループ島最後のカドリーユのヴァイオリニストだった、エリー・コロジェの録音が4曲プラスされました!~ほぼオリジナルLPに沿ったジャケットも素晴らしいですねえ!
以下★メーカーインフォより
このアルバム全体を通して、ロベール・マヴーンズィの才気あふれた演奏が多くを占め、そのクラリネットとソプラノ・サックス(2曲)の奏法と超絶テクニックが如何なく披露されている。そのイムプロヴィゼーションにおいては、彼の豊穣なる想像力はパリで約30年間もジャズマンとして活躍した長く豊富な経験をよく物語っている。それを見事に補佐するのが、当時21歳の若きピアニスト、アラン・ジャン=マリーであり、彼はカペステール・ベロー(グアドループ島バス・テール南東部)のロングトー兵舎で兵役についていた。
本作『黄金のビギン』はアラン・ジャン=マリー+ロベール・マヴーンズィのコンビの初録音となるが、この二人のミュージシャンの調和は完璧である。この時期はアラン・ジャン=マリーのピアノ・スタイルの転換期にあたり、エドゥアール・マリエパンに深く影響されていたものの、その即興ソロはトラディショナル・ビギンの限界を越えて、モダンの火花散る高みへとビギンを押し上げていったのである。
このアルバムでもうひとつ注目されるのは、女性歌手マニュエラ・ピオッシュの参加である。彼女は無名のアーチストで、若くして亡くなり、ほとんど完全に忘れ去られたような状態だが、ここでちゃんとしたオマージュを捧げる価値は十分にある。彼女はポワン=タ=ピトルの庶民街の出身で、ごく若い時から歌に対する並々ならぬ情熱のままに、驚くべき熱情と誠実さをもってアンティルの人々の日常生活を構成する苦悩、喜び、小さかったり大きかったりする感情の動き(人間ひとりひとりの生きた体験)を歌で表現した。その熱く炸裂するような声の響き、その天性による音感の正しさ、その控えめなヴィブラート、その声の丸み、その表現的な力強さ、その典型的クレオールの声による知的な韻律発音は、最も極端な音程にいたるまでその輝きとエモーションを保ちつづけている。最も偉大な女性、ブルースの女帝、ベッシー・スミスを思わずにはいられない。もしも今日、ビギンの女王を選出するとすれば、私は躊躇なくマニュエラ・ピオッシュにその称号を与えたい。(解説より抜粋)
このCDにはボーナスとして1972年グアドループ島最後のカドリーユのヴァイオリニストだった、エリー・コロジェの録音が4曲プラスされている。フランスで3世紀前に流行していた社交ダンスを西インド諸島への植民者たちが持ち込み、その享楽が固定されほとんど昔のままの姿のままに今日に保存された、まさに驚異的なものの一つがカドリーユと呼ばれる舞踏音楽だった。
■オルケストル・トラディショネル・ド・ラ・グアドループ
ロベール・マヴーンズィ(クラリネット、ソプラノ・サックス[6&12]、ヴォーカル[7&9])
アラン・ジャン=マリー(ピアノ)
ドナディエ・モンピエール(ベース)
テオメル・ユルシュル(ドラムス)
シャルリー・ショムロー=ラモット(コンガ)
マニュエラ・ピオッシュ(ヴォーカル)
クロード・トランショ(ヴォーカル[12])
■アンサンブル・ド・カドリーユ・グアドルーペアン
エリー・コロジェ(ヴァイオリン)
ドナディエ・モンピエール(ベース)
不詳(ギター、パーカッション)
アンボロワーズ・グーアラ(コマンドゥール[号令者])
1. われら料理人
2. グアドループ・アン・ヌー
3. ムーヌ・ア・ウ・セ・ムーヌ・ア・ウ
4. セ・ビギン
5. チ・ドゥードゥー・アン・モワン
6. ニノン
7. 私の自動車
8. やせた蛇
9. トゥールールー
10. ドゥードゥー・パ・プルーレ
11. ショーフェ・ビギン・ラ
12. さらばスカーフ、さらばマドラス
13. パンタロン
14. 夏
15. 雌鳥
16. 羊飼い娘