CRISPIN MUTANUKA & EDWIN SYASIYA / MUTANUKA AND SYASIYA

ザンビアとジンバブウェ国境を分かつザンベジ川の流れが、世界最大級の瀑布となって落ちる場所、ヴィクトリア・フォールズ(モーシ・オワ・トゥーニャ)のかたわら、ザンビア側の土地にはレヤ(Leya / Baleya)とトンガ(Tonga / Batonga)と呼ばれる人々が代々暮らして来ました。けれど、その先祖代々の暮らしをかえりみず、地元の若い世代が、ヴィクトリアの滝の周囲に展開される海外資本の観光事業に職を得ることを望むことは、あるいは浮世の定め、仕方のないことなのかも知れません。
そんな中、レヤの人々に伝わる音楽の担い手、マスターミュージシャンたる二人の古老、空の瓢箪が共鳴胴として木製の鍵盤に吊るされた木琴、シリンバ・ザイロフォンを長年演奏して来たクリスピン・ムタヌカ(1931-2021今年亡くなってしまったそう…)、そして、ブリキの空き缶を厚い一枚板を基盤とする親指ピアノにくくりつけた、カニンバ・メラフォンを弾き語るエドウィン・シャシヤ(1939-)…、土地の若い世代に後継者はなく、代々培われ、担って来たレヤの音楽が、自分達を最後に途絶えることを知っている二人の演奏を、現地フィールド・フィールド・レコーディングしたCDが本作ということになります。
録音制作はお馴染み、オランダSWPレコーズ主宰(ミュージシャンとしても非凡な)マイケル・ベアードで、自らザイロフォンを演じる場面もありますが、マイケルはこの二人のマスター・ミュージシャンを、”絶滅危惧種の音楽文化” と捉え、2018年から2020年にかけて現地に通い、本CDのレコーディングと並行し、58分のドキュメンタリー映画『Mutanukaand Syasiya』を撮り上げています。そのドキュメンタリーに聞くことができる音楽シーン演奏も、サントラを兼ねる本CDにすべて収めれているとのこと(ところで、その映画を観るにはどうしたらイイんでしょうね?いずれ、尋ねておきましょう。ピンクの壁を背景にそれぞれの楽器を前に置く二人のたたづまいの素晴らしさからして、是非、映画を観たいものですが…)。
それにしても、この演奏はいったい何でしょう?
伝統といい共同体という、そんなイメージから逸脱するような、そのインプロビゼーションの奔放さ、あるいは乱調のミニマリズムとか、湾曲して行くポリリズムとでも言いたくなってしまう、ソロ、もしくはデュオ演奏が繰り広げられているのでした。
ピッチやタイム感を自在にズラシながら、放り投げるような掛け声、歌とともに、刻々と変化して行くポリリズミックな不協和音をつづら折りのように繰り出す二人の演奏は実にフリーキー、録音の素晴らしさも相まって、なんだか目の前の演奏を聴いているような臨場感で、解放感ある演奏を楽しませてくれる CD です(大きな音で聴いて下さい)。
とか何とか、幾つかの曲に関して具体的に説明しようと思っているうちに(力不足です)、あっという間にCD1枚、聴き終わってしまいそうなんですが…。それにしても、ちょっとボケが入っている自分とはいえ、どんな曲を今まで聴いていたのか、よく思い出せない、というか、二人それぞれの演奏や声の感触は耳に残っていますが、それが曲としてのまとまった印象につながらない?変幻自在な、動的で鮮やかな音響の途切れない連続の方に、耳を奪われてしまうということはあります、という言い訳はこの場合、アリかも知れません。

そして、暗がりの中、酩酊に任せ独り言に節をつけているような静かなカニンバ・メラフォンの弾き語り、どこか、向こうの方から動物や鳥の声が聞こえて来ます。ラストは、機嫌よく変拍子に弾んだシリンバ・ザイロフォンの演奏。丸みある木琴を叩く音が、踊りながら通り過ぎて行くように聞こえます。シンプルかつラフですが、両者とも、よくよく聞くと物凄くテクニカルな演奏かも知れない、と納得し始めたところで CD は終わってしまいました。

1.Kuli Shungu 01:05
2.Wbelelwa 01:46
3.Cheeba Mabelo Abanakwe 05:49
4.Wabu Kuwa Simufwene 02:37
5.Cheeba Mabelo Abanakwe 03:07
6.Chibengelele Muyuni 04:03
7.Chisenga 03:13
8.Ninzi Kamba Mukwa Kuma Bombe 03:02
9.Sosoloka Ndila Kutwa Kansi 03:02
10.Muzeemo 07:21
11.Sia Chinyama Ntula 04:06
12.Musimbi Nguma 03:50
13.Lozi Dance 04:20
14.Nkoya Dance 05:51
15.Kuomboka Song 04:15
16.Mutema Syabazibe 04:40
17.Sichiwindi Kuya Balombe 03:28
18.Crispin’s Last Date 04:24

Two old master musicians amongst the Leya people of Zambia – when they die their music will die with them, as the young people just are not interested. Music as an endangered species! This cd has all the music heard in the documentary film ‘Mutanuka and Syasiya’ made by Michael Baird and Engel Mulder, plus other recordings made over the years by Michael Baird of Crispin Mutanuka playing his silimba xylophone and Edwin Syasiya playing his kanimba lamellophone.

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