LEYLA McCALLA / BREAKING THE THERMOMETER

熱があることを隠すために「体温計を壊す」というタイトルですね。
ハイチ人の両親のもと、ミューヨークに生まれ、ニューオーリンズに住まう才媛、レイラ・マキャーラの新作、4作目です。
冒頭曲では、ヴードゥーっぽいビートで、ハイチ生まれのギタリスト、フランツ・カッスゥ (1915 – 1993) の曲をトゥルバドールっぽいバンジョー弾き語りで聞かせています。
2曲目もバンジョー弾き語りの変拍子っぽいワルツ、そこに古い音源と聞こえる会話や語りを挿入しつつも、軽快な調子でレイラ・マキャーラは歌っています。
3曲目は誰とも知れない女性の独白、放送劇の抜粋なんでしょうか?そんな感じででアルバムは進みます。なんだか、映画でも観ているような気分になりました。
クレオール語メインで放送されたハイチ初の民間ラジオ局 “Radio Haiti-Inter” の所有者、ジャン・ドミニクが 2000年に何者かによって殺されたことを踏まえつつ、何世紀にも渡り、政治的な抑圧を受けて来たハイチの貧しい人々の心のありようをアルバムに盛り込むため、ラジオ・ハイチのアーカイヴから、ストーリーテリングやオーディオ音響が選ばれ(あるいは、マキャーラ自身と実の母との古い会話の録音なども)、自作曲はじめ民謡やカヴァー曲によって綴られた本アルバムの随所に挿入されたアルバムとなっています。
基本、ハイチのトルヴァドール風やヴードゥー・リズムっぽい曲の並びに、マンノ・シャルルマーニュやカエターノ・ヴェローゾの曲も挟まれています。
そのマンノ・シャルルマーニュの曲では、ケベック生まれのハイチ系女性歌手、メリッサ・ラヴォーがゲストで歌っています。
そんな新作アルバムとなりました。
あるいは、音楽的な心地よさよりも、切実なもの、抵抗や反意が先行するようなアルバムを意図したのかも知れませんが、これまで以上に、レイラ・マキャーラのクレオールっぽい歌い口が、瑞々しく聞こえるのも確かです。

All songs written by Leyla McCalla
except
“Nan Fon Bwa” (Composed by Frantz Casseus)
“Dan Reken” (Traditional; Words by Richard Brisson)
“Dodinin” (Atis Indepandan)
“Pouki” (Manno Charlemagne)
“You Don’t Know Me” (Caetano Veloso)
“Artibonite” (Lyrics by Leyla McCalla; Melody by Louis Lesly Marcelin, “Sanba Zao”)
“Boukman’s Prayer” (Music by Leyla McCalla; Words by Dutty Boukman)

Leyla McCalla, vocals, cello, tenor banjo, guitar
Shawn Myers , drums, percussion
Pete Olynciw, electric & upright bass
Jeff Pierre, tanbou
Nahum Johnson Zdybel, guitars
with special guest vocalist Melissa Laveaux on “Pouki”

1 Nan Fon Bwa
Composed  by   Frantz Casseus
2 Fort Dimanche
3 Bon Appétit Messieurs
4 Le Bal Est Fini
5 Dan Reken
Music  by   Traditional
Words  by   Richard Brisson
6 Dodinin
Written by   Atis Indepandan
7 Ekzile 8 Pouki
Written by   Manno Charlemagne
9 You Don’t Know Me
Written by   Caetano Veloso
10 Jean And Michèle
11 Vini Wé
12 Artibonite
Lyrics  by   Leyla McCalla
Music By  Louis Lesly Marcelin
13 Still Looking
14 Memory Song
15 Boukman’s Prayer
Music  by   Leyla McCalla
Words  by   Dutty Boukman

 

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