KAMEL EL HARRACHI / NOUARA

>こちらがファーストですね、カメル・エル・ハラシ11年ぶりの新作、セカンド・アルバムです(配信リリースは2021年、CDもこの秋に初めて流通しました。が、CDジャケ裏には2020年と明記されています)。それにしても、お高くなってしまって、すみません!なかなか流通に乗らないCDなので…。が、内容としては、期待を裏切りませんでした!この11年の地道な成長が、その歌声に聞こえるような気がします。
収録の全11曲のうち、2曲のみカメル自身が作曲したナンバーで、ほか9曲はすべてオヤッさん、故ダフマン・エル・ハラシ作曲ナンバーの解釈&カヴァーということになります。
多くは端切れのイイ、ミディアムな前傾リズムのカヴァー曲において、男声コーラス、時に女性喉声合唱のウルレーション(ユーユー)を従え聞かせるカメルの歌声が、いっそうオヤッさんの歌い口の筋に沿った素晴らしいものと聞こえ、なかなか感動的なのでした。
シャアビ継承、というか、血は争えないというか、前世紀の半ばを過ぎて完成したアルジェリアン・シャアビの伝統、もしくは旨味を今に再現しようという、個よりも伝統、家系を優先した(?)懐の深みを感じさせる作とも聞こえます。
マンドーラ、ピアノ、ギター、バンジョー、ヴァイオリン、チェロ、タール、ダルブッカ等によるオーソドックスかつ端正豪華なバッキングもしかり、シャアビ全盛期が達成した洗練と野趣のバランスを今に再現、その再現の中に光るカメルならではの曲解釈も聴きどころでしょう。でも、再現であることに変わりはなし、が、されど再現、そのオーソドックスの中に籠められた心意気あってこその聴き応えに、感じ入った次第。余計なものの無いタイト&クール、そこに生まれるシャアビという音楽の、芳醇な奥行きに不意打ちされていただければ幸い(何しろ、アラブ・アンダルース音楽以来、千年の音楽的な歴史を背景に生まれた大衆歌謡です)!
…過去の達成に、ここまで真摯だった現行作品、なかなか見つかりませんよね。あるいは、偉大なる父親の遺産に、ここまでまっすぐに向き合った息子もいないでしょう。
 
 
1 El Behdja 6:58
2 Mahalak Nouara 8:34
3 Bacherni Bel Khir 4:56
4 Ana Loughram 5:39
5 Ghabou 3:43
6 Ana Moulough 4:45
7 Ya El Ghalet 5:47
8 Mensabni 4:34
9 Ya Nass El Hob 7:31
10 Mayechkach 6:15
10 Sabhiya Khebarh 8:10

 


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