あ、見逃していましたよ。喉の手術をし、80歳を超え現役復帰した自作自演歌手、エンリコ・マシアス(1938年生まれ)の2019年作、それにしてもジャケに並んだ男たち、なんとも全員イイ面構えじゃないですか…アルジェリア生まれのセファルディム(ユダヤ系)として、フランスへ渡り歌手デビューしたエンリコ・マシアスを長きに渡ってバック・アップして来た音楽家たち “アル・オーケストラ” の面々ですね(もちろん結成されて60年近く、メンバーの交代はあったでしょうが)!前回初入荷時には、中身を聞かずにオーダーしてしまいましたよ。でも、見た目で分かる男たち?の、シャンソン mixed シャアビ / アラブ・アンダルースの今日的昇華の粋、ですよね、
1 Le Grain De Blé
2 Adieu Mon Pays ft. Kendji Girac
3 Les Filles De Mon Pays
4 Chanter
5 Paris Tu M’as Pris Dans Tes Bras
6 J’appelle Le Soleil
7 Ma Patrie
8 Aux Talons De Ses Souliers
9 Un Rayon De Soleil
10 La Femme De Mon Ami
11 Solenzara
12 Les Gens Du Nord
13 L’Oriental
1961年アルジェリア独立戦争が起こると、フランスの民族分離統治のもと、”ピエ・ノワール”と呼ばれた欧州からの移住者とともに、フランスの市民権を与えられ優遇されていたセファルディム(ユダヤ系)住民達は、宗主国フランスに冷遇されていた多数派、アラブ系やベルベル系住民によって組織されたアルジェリア民族解放戦線の迫害を受けることになります。
エンリコ・マシアスの義理の父だった、アラブ・アンダルース歌謡の人気歌手、シェイク・レイモンが暗殺されると、学校教師を勤めながらもシェイク・レイモン楽団でギターを弾いていたマシアスは身の危険を感じ、妻とともにフランスへ逃れます(その後、今日まで、独立後のアルジェリア政権は、当時フランスへ逃れたユダヤ人、”ピエ・ノワール”達のアルジェリアへの帰還は認めていないそうですが、ま、それも、植民地全住民の一致団結を阻害し、独立機運を遠ざけようという仏の植民地統治のエグさに端を発した歴史の過ちかと…)。
翌62年に仏 Pathé からリリースされたマシアス24歳のデビューEP収録曲 “Adieu Mon Pays(さらば、私の祖国)”はフランスを中心に大ヒットとなり、欧州各国はもとより、イスラエル、中東、北米、ロシア、そして日本でも世界的な人気を博すことになります。
この”Adieu Mon Pays” は本CDにも再演再録されていますが…
というわけで、みなまで言う必要はないでしょうね。上のような出自とスタート地点を持つ越境のシャンソニエ、エンリコ・マシアスの、そのキャリアを代表するような過去の曲の数々を、勝手知ったる仲間達による新たな伴奏で歌い綴った80歳の録音、ということになります。