CHEIKH RAYMOND / CHANTS MALOUF DE CONSTANTINE

マルーフというとモロッコ、チュニジア、レバノンなど、アラブ諸国で愛されている古典詩を元にした即興的なヴォーカルものという印象がありますが、アルジェリア東部、チュニジア国境に近いコンスタンチーヌ地方に伝わるマルーフは、スペインから彼の地へと伝えられたアラブ・アンダルース音楽のサブジャンルです。ちなみにマルーフとは「習慣的、いつもの」という意味だそうで、想像するに「シェイク、いつものやつ歌ってくれ!」みたいな感じで名付けられたのではないでしょうか?というわけで、アルジェリア北東部の同国第3の都市コンスタンティーヌで歌ったマルーフの名歌手シェイク・レイモン(1912-1961)のベスト2枚組がMLPからリリースしています(音質向上!)。
レモンは、キリスト教徒に生れながらユダヤ人として育ち、少年の日にディープなアラブ=アンダルース音楽にのめり込みその耳と滑らかな歌声とウードの技で、ハタチにしてシェイク(マスター) となりました。以降~フランス植民地時代/第2次大戦 (ナチ占領) ~戦後の独立運動という激動のアルジェリアで、アルジェリア/アラブ人の反ユダヤ風潮が年々高まる状況の中にあっても、最も愛されたユダヤ人アーティストだったそうです。けれどそのアルジェリア戦争のさなか、コンスタンティーヌの市場でレモンは暗殺されてしまいました。~それほど愛されたレモンが殺されたと知るや、アルジェリア全土のユダヤ人たちはもはやこの地に居場所はないと、ほとんど国外に亡命してしまったという逸話も残されています。つまり、伝説的なウード弾き語りの歌い手でした。

CD11. INSSRAF ZIDANE – ALA YA NASSIM ESSABA / 2. INSRAFAT / 3. EL BRAGUE / 4. HAWZI – MAL HBIBI MALOUH / 5. HAWZI – NAR H’WAKOUM LAHAB CD 2 1. ZAJAL / 2. KAM WA KAM / 3. ALLAH YEHENIK / 4. QUADRIAT – BKAW AALA KHIR / 5. EL WARD / 6. TAL’ABAD BIA

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