TokyoからSavannaへ
ニャティティとパーカッションで織りなす、サバンナへの旅Anyangoによるルームレコーディングから物語が始まった。Anyangoによる初のニャティティ・インストゥルメンタルアルバム。>★
西アフリカのパーカッショニスト、ラティール・シーの参加
東アフリカ・ケニアの伝統を受け継ぐ日本人女性Anyangoと日本の心を深く理解する西アフリカ・セネガル人ラティール・シーとのリズムの調和
Co-producer・Nori Shiotaとの出会い
Anyangoが歌を学ぶ為にNYを目指したのは、あの2001年9月11日。NYに着陸できずアラスカに降りたその飛行機に、Shiota氏は偶然同乗していた。その後Shiota氏は、12年間アメリカを拠点として活動。2014年に帰国。今回Anyangoが自ら録音した音源をブラッシュアップし、ミックスし音源が完成した。
savanna
6th Album “Savanna”に寄せて
アニャンゴとして初めてのインストゥルメンタル・アルバム “サバンナ” が完成! ベースの音から、ダブの音、ハーモニクスの音、クリスタルの音……、驚くことにこれら全部がニャティティ。古代エジプトの竪琴(リラ)と同じルーツを持つケニアの伝統弦楽器ニャティティは、”楽器”として限りない可能性がある! 今回はほぼ、全曲マイルームレコーディング。自分の部屋で瞑想しながら日記を綴るみたいにニャティティをつま弾いていると……、激しいスコール、地平線に向かって歩く象、芽吹く緑、瞬く星、母なる大地の祈り……。まるで映画のシーンみたい! 森羅万象、サバンナそのもの!ニャティティの精霊に導かれるまま指先から産まれた、生きとし生ける全ての命への愛の讃歌!あなたの心に、届きますように。2015 Anyango
Anyango’s Profile
東京生まれ。アフリカの音楽に魅了され、単身ケニア奥地の村で修業し、現地でも限られた男性だけに演奏が許されているニャティティの世界初の女性奏者となる。日本国内だけでなく、アフリカ、ヨーロッパなどでも広く演奏活動を行っている。2010年8月、日本で一番大きな野外ロックフェスティバルであるFUJI ROCKに出演し、ワールドミュージック部門のベストアクトに選ばれる。2011年11月、テレビ朝日「徹子の部屋」に出演。2012年8月、『アニャンゴの新夢をつかむ法則』を出版。2013年、ドイツ・イタリア・フランス・ケニア・アメリカにてワールドツアー。10月、ミニアルバム 『ALEGO 〜ニャティティの故郷〜』をリリース。テレビ東京「Cross Road」に出演。12月、『翼はニャティティ舞台は地球』(学芸みらい社)を出版。2014年9月、5thアルバム『Kilimanjaro』をリリース。日本ケニア文化親善大使。Anyangoとはルオ語で「午前中に生まれた女の子」という意味。
What’s Nyatiti
ケニア・ルオの伝統弦楽器。もともとルオの選ばれた男性だけが演奏することを許された神聖な楽器だった。右足首につけている鉄の鈴は「ガラ」という。右足親指にはめている鉄の輪は「オドゥオンゴ」という。ガラを鳴らし、オドゥオンゴをニャティティの木のへりにゴツゴツとあてて、リズムを生み出す。ヴォーカルとストリングス(弦楽器)とパーカッション(打楽器)の三つの動作を同時に行うのが特徴的である。弦は8本の釣り糸(ナイロン弦)でできており、太さは三種類。昔は弦にメス牛のアキレス腱を使っていたそうだ。ビーンビーンと長く、渋く響く音の秘密はサワリの部分。細い竹のようなもの(ヨシ)2本と木片が蜜蝋(みつろう)で止めてある。
Co-producer:塩田哲嗣(シオタ ノリヒデ)
1992年頃からベーシストとして数多くのSession & 録音に参加。1996年ニューオリンズで演奏活動。1997年帰国後、大坂昌彦(Dr)などのグループで活躍。2001年ニューヨークに再渡米。12年間のアメリカを拠点とした活動を開始する。2003年東京スカパラダイスオーケストラのNARGOと”SFKUaNK!!”を結成。2005年よりプロデュースも本格的に開始し、NY在住中Vocalの”Bei Xu”をプロデュース。iTunes Musicなどのヒットチャートで1位を獲得。2010年ボストンのバークレー音楽大学に入学、MP & E(ミュージックプロダクション&デザイン)とPerformanceのDual Majorで2014年5月に卒業。2014年6月より日本に活動拠点を戻し、ミュージシャン & プロデューサー & 録音エンジニアとして活躍中。
Percussion:Latyr Sy(ラティール・シー)
パーカッショニスト・ボーカリスト/セネガル 。5歳からアフリカンドラムを始める。1988年トラディッショナル・パーカッション・バンド “AFRICA DJEMBE” を結成しソリスト、リードボーカル、リーダーとして活躍。 ネルソン・マンデラ・コンサート、ゴレ国際パーカションフェスティバル、サッカーアフリカカップ開会式典や、サッチャー首相、ミッテラン大統領等の歓迎式典など、世界各国の首脳・VIPの歓迎式典、公式式典で多数演奏。1995年来日後、自らのパーカッショングループ “AFRICA SUNU XELCOM” を結成。また、パーカッショニストとして数多くのアーティストのレコーディングやコンサートツアーに参加。民族音楽、ラテン、ジャズ、ロックから日本の古典楽器に至るまでの幅広いジャンルで活躍している。
アニャンゴによる曲解説(全作曲 Anyango)
01 Gaudensha(ガウデンシャ)
キユーピーマヨネーズ2015年CM曲。Gaudensha(ガウデンシャ)とはケニアの女性の名前で、Anyangoのニャティティの師匠オクム夫人の名もGaudenshaという。この楽曲は、Savanna(サバンナ)の厳しい自然の中で、たくましく生きるアフリカの女性たちへの讃歌である。
02 Kariobangi(カリオバンギ)
アフリカ大陸東部で、大きく発展を続けるケニアの光と影。高層ビルが並ぶ首都ナイロビには、アフリカで最大規模のスラムがある。その中の一つ、Kariobangi(カリオバンギ)は、主にルオの人たちが多く住む一区画だ。Anyangoは、ニャティティの修業時代、このKariobangiに出かけては、ルオの子どもたちに民族の伝統弦楽器であるニャティティを弾いて聴かせていた。
03 Mashindano(マシンダーノ)
アフリカでは、伝統太鼓やダンスなどのコンペティション=競技会が、今もあちらこちらで開催されている。スワヒリ語でこうした競技会のことをMashindano(マシンダノ)という。さあ今夜もまたどこかの村で太鼓のマシンダノが始まった。炎は勢いよく燃え上がり若者たちはいきり立つ。今夜の一等賞は雌牛だ……。
04 Savanna
Savanna(サバンナ)の夕暮れ、地平線の彼方から一頭の象がゆったりと歩いてくる。さざめくアカシアの木、揺れる陽炎、長く伸びる象の影。やがてそれは寄り添う2つの影となり、地平線の向こうへ消えていく。河瀬直美監督の『2つ目の窓』という映画からインスピレーションを得て創った曲。思いもかけず雄大な楽曲に成長した。
05 Flamingo
ナクル湖の湖畔で羽を休める Flamingo(フラミンゴ)の優美な姿。ニャティティの軽やかな音色が世界を桜色に染めていく。クリスタルのようなエフェクトを効かせた多重録音がニャティティ・オーケストラともいえる新たなジャンルを確立した。幾十万羽、幾百万羽ものFlamingoの群れが一斉に飛び立つ光景を、音を映像のように扱い捉えることに成功した楽曲。
06 After the Squall
Squall(スコール)の後、一夜明けて褐色の大地が鮮やかな青緑色に変わる。うつろいゆく森羅万象、生と死の輪廻天性、新しいすべての命は喜びを称えて瑞々しく蘇る。ケニアには雨季が年2回ある。モンスーンの影響を受けて起こる大雨季が3月から5月、そして小雨季が10月から12月。その森羅万象をニャティティによる初のレゲエ曲で表現した。
07 Old Violin
十年前、一人のケニアの詩人が、日本からやって来た女性に一編の詩を贈った。「君の弾く竪琴は、ボクたちに忘れていた大切なものを思い出させてくれた」と。アフリカの古びたヴァイオリン、それがニャティティだった。「アニャンゴよ アニャンゴ 人々の人生を変え続けなさい 古いアフリカの ヴァイオリンを持って」…..
08 Gaudensha Ⅱ
ニャティティの弦は今ではナイロン(釣り糸)が使われているが、昔は雌牛のアキレス腱だった。楽曲の頭に登場する低く唸るような弦の響きは、ニャティティのレジェンド故オグワン・レロが使っていた楽器で、弦は雌牛のアキレス腱である。中盤から登場する笛も自分で演奏している。この曲を創っているとき、自然発生的に自分の中からアフリカの祭りのリズムと日本の祭りのメロディーの融合が沸き上がって来た。
09 African Owl
Savannaの寡黙な夜。闇夜に浮かぶ巨大な満月。ニャティティには、弦楽器としての側面と打楽器としての側面があるが、果たしてニャティティ一つでどこまでの音色が表現できるのだろう。限界はあるのか?ニャティティでノイズ、アンビエント、ダブ、実験音楽!? “ニャティティで出せる音”という縛りに徹底的に拘った次世代的実験曲。ちなみに、Owl(フクロウ)は、どんな小さなものも見落とさない「森の番人」「森の守り神」として「知恵」「賢者」の象徴でもある。
10 Meditation of Motherland
母なる大地が祈りをうたう。魂が自由な旅に出る。大切な人を想いながら、リラックスして心と頭を空っぽにし、まるで瞑想するように楽器を触っていたら、いつのまにか指先から生まれていた曲。極めて私的で等身大の自分そのもの。指先がニャティティに触れ、紡ぎ出される母なる大地への愛の讃歌。