★ケイト・グリフィン&マチュメ・ザンゴ
冒頭爪弾かれるバンジョー、その一音がかつての大西洋を往来し、歴史を乗り越え今アフリカ大陸南東、インド洋に面するモザンビークの伝統楽器であるティンビラとFusing 融合する。(仲野麻紀、ライナーより)
英国のバンジョー奏者、ケイト・グリフィンとモザンビークのチョピ人で、その伝統楽器ティンビラ奏者であるマチュメ・ザンゴが、コロナ禍の最中だった2020年に、オンライン・レジデンス「Making Traks」への参加によって出会い、インターネットを介して共演し作り上げたのが、本作『Tchopo(チョポ)』です。
ケイト・グリフィンは、バンジョーの名手Dan Walsh ダン・ウォルシュに「国内トップのバンジョー奏者の一人である」と評価され、さなざまなバンドやセッションに参加している。特に、パートナーであるフォード・コリアーと共にFolk集団「mishra」を結成し高い評価を受けています。
マチュメ・ザンゴは、過去数回に来日し、各国で様々なミュージシャンと共演、チョピの民族学的研究を並行して行ない、モザンビークの現在を生きる人を、Yout Tube等で紹介しています。彼が奏でるティンビラは、いわゆるシロフォン系の伝統楽器で、ヒュー・トレイシーも1950年前後にその合奏をフィールド録音し、復刻CDシリーズ「幻のヒュー・トレイシー・レコーディング・シリーズ」のなかでも、大きく取り上げえられています。
バンジョーは、もともとアフリカ起源の楽器です。奴隷制時代に、太平洋を越え、カリブ~U.S.A.と回って、アイルランド、イングランドでも親しまれる楽器です。そんなバンジョーが、新たにアフリカ音楽と融合し合う、そんなイメージを実際に体現したかのようなサウンドが詰まっています。(メーカーインフォより)
アフリカ起源とされるバンジョーの、期待の英国若手女性奏者と、来日もあったモザンビークはチョピ人のティンビラ(木琴)奏者にして、注目のアフリカ新世代音楽家によるコロナ下に実った遠距離共演作国内仕様盤。ともに、打楽器的な楽器と言えるでしょう…それぞれ弦楽器のバンジョーと木琴のティンビラを演奏し、歌を交わしつつ、南部アフリカと英国トラッドの味わいを解き合わせて行く、その手際の良さが光る作。不自然な異文化交流ぶりは微塵もなし!
1. MILHOLO ミルホロ
2. MATILWENI マチルウェニ
3. IF WE LISTEN 耳を傾けて
4. MGUENISO ムグエニソ
5.TCHOPO チョポ
6.OPEN YOUR EYES 目を開いて
MATCHUME ZANGO マチュメ・ザンゴ (Vocals,Timbila, Xitende, Mbira, Percusion )
KATE GRIFFIN ケイト・グリフィン (Vocals, Banjo)
FORD COLLIER フォード・コリエー (Guitar, Whistle, Percussion)
NELTON MIRANDA ネルトン・ミランダ (Bass)
TSIDOD ツシィドッド (Drums)
▽参考
「モザンビークのティンブレと、アフリカ起源のバンジョー」
モザンビークはインド洋に面した南部アフリカの国です。
そのインド洋沿岸に住まうチョピ族の木琴、ティンビラは、ユネスコの無形文化遺産に指定されいます。
今日は、そのティンビラの若き演奏家、何度か来日公演もあったマチュメ・ザンゴの新作から、1曲聴いていただきたいと思います。
この新作でマッチュメ・ザンゴと全面的に共演しているのは、もともとアフリカ起源とされる弦楽器、北米のカントリー・ミュージックなどでおなじみのバンジョーを演奏する英国人若手女性、ケイト・グリフィンです。
このふたり、コロナ禍の最中にインターネットで知り合い意気投合、インターネットを介して、遠距離恋愛ならぬ遠距離録音した成果が、これからご紹介するモザンビーク盤のCDとなります。
それでは1曲、お聴き下さい。
マチュメ・ザンゴ&ケイト・グリフィンで、曲名は「ミルホロ」です。
>https://www.youtube.com/watch?v=sXTSxqrhBuc
モザンビークの木琴と英国のバンジョー、全然OKじゃないですか?
まったく違和感のない演奏、異文化交流という感じじゃないですよね?
もともと、こうした伝統音楽が存在したんじゃないか?という思ってしまうぐらい自然な演奏、そして歌の交わりだったんじゃないかと思います。
どうでしょう、モザンビークの伝統音楽でありつつ、同時に、英国のトラディショナルな音楽にも聞こえてしまうこの不思議?
こういう曲を聴いてこそ、音楽に国境はない、というような言葉を使いたくもなります。
ジンジンと振動する音を残すモザンビークの木琴、ティンビラの演奏と、ハギレよく軽快なバンジョーの演奏が互いに溶け合い、リズムとメロディーが一体化したような演奏でした。
なるほど、バンジョーが元を正せば、アフリカ起源の楽器ということも納得させられます。
そして、互いに、英語とチョピ語で、代わる代わる歌う二人の歌も、まったく違和感なく、リレーしていましたね、
こんなことを歌っていました。
この世界は私たちに人生の別の現実を見せている、と、マチュメが歌います。
灰色の雲が空に広がっている、常に時間と競争、日々を乗り切るために、と、ケイトが歌います。
大地に立って風が変わるのを見ている、と、マチュメが歌います。
ハガネで地面を引き裂き、貪欲に、常に下を見ながら、と、ケイトが歌っています。
ま、歌詞の意味は、よくわかりませんが、モザンビークの生活と英国の生活を象徴するような歌詞なのかも知れませんね。
〜以上、まだ、放送されてないかも知れない?NHKラジオ当方担当の小コーナー台本原稿です。