さ、北米 / 越僑POP、最後の大物を紹介しましょう。ホアン・オアンは1950年生まれ、戦前のサイゴン(現ホーチミン)で6才の頃から歌って来たヴェテランです。60年代半ばからベトナム戦争終戦直後の75年に渡米するまでに、戦前のサイゴンASIAレーベルに200枚以上のシングル盤を吹き込んだという人気歌手でした。ベトナムの大衆歌謡はカイルオンの劇中歌から発展したことは知られるところですが、もちろんこのホアン・オアンもカイルオンやヴォンコといったナンバーも得意としていたようで、この過去ヒット曲を網羅した新録アルバムには、カイルオン系、ヴォンコ系歌曲が、民謡系ポップ&越僑歌謡ナンバーとともに並びます。全体にスロー、ミディアム・スロー、ベトナムの各種弦楽器の音色を活かした、どこかノスタルジックな伴奏で、たゆたうメリスマをゆったりと聞かせる歌謡曲CDになっています。なんとも柔和で優雅、その滋味溢れる歌い口は流石ですね(ちょっと鼻にかかったような歌声が日吉ミミっぽいんですが?)。そして、ゲストも豪華です。5曲目では同じくカイルオン系女性歌手、後輩のマイ・チェン・ヴァンと優雅なカイルオン・ナンバーをデュエットしています。また、越僑POPナンバーのスタンダードとなっている6曲目では、なんとフーン・タンの姉、現地ベトナムと越僑シーンをまたに掛け活躍するフーン・ラン、そしてご存知、ニュ・クインを従えてのトリオでの歌唱を聞かせてもいます。ベトナム女性歌謡ファンなら、きっと楽しんでいただけると思います。
〜こういう音源、きちんとしたCDで欲しいものですねえ…