ラッダー・シーウォーラナン / เติมส่วนที่ขาด 12

“เติมส่วนที่ขาด” シリーズ、その意味は英訳すると “fill in the missing parts” 〜 “足りていない部分を埋める” といった意味だそうです。つまり、それまでCD化されていなかったタイ・ポピュラー音楽の黎明期録音を復刻したシリーズ、ということになるんでしょうね。未だルークトゥン(田園調歌謡)とルーククルン(都会派歌謡)の区別が曖昧だった頃、40年代末頃から50年代を通じて行われた初期タイ歌謡音源のIMF レーベルのCDシリーズ、今後ポツポツと紹介させていただきたと思っています。

ラッダー・シーウォーラナンは(1936−1985)バンコクに住まうムスリムの家庭に生まれたそうです(現在、タイのムスリムは全人口の5%ほどだそう)。歌うことが大好きな子供時代を経て(あんまり大声で歌ってばかりいるんで、クラスメートはうんざりしていたという話?)、16歳の時、パタナコーン映画社主宰の歌謡コンテストに参加、審査員には作詞作曲家にして歌い手としても有名なソムヨット・タサナファンほかが並んでいたそうです。
そのコンテストで、グレーの学制服でステージに立ったラッダーに対して、初めはブーイングで応じていた観客たちも、次第にシーンとなり、ラッダーが歌い終わると満場の拍手、その瞬間、ラッダー・シーウォーラナンの歌手への道が開けました。結局、その歌謡コンテストでラッダー・は1位となり(ちなみにその時3位になったのが、その後、ルーククルンの人気歌手となったウォンジャン・パイロート)、以降、多くのラジオ曲がラッダーの新曲を求め争奪戦を繰り広げるほどの人気を得、20世紀半ば以降、70年代にかけ、タイ全国区の人気歌手として過ごしました(結婚し3人の子も育てました)。本CDは、1953年ソムヨット・タサナファン作曲による大ヒット曲 “แดนมธุรส” はじめとする50年代の初期録音集と思われます。
今で言えば、ロリ声でしょうか?タイ大衆歌謡の揺籃期ならでは風情あふれるオーケストレーションの中から聞こえるそのノスタルジックな少女っぽい歌い口が、得難いものと聞こえます…。

 

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