大谷氏 / 地道な活動

地道な活動を続ける北陸の鬼才、大谷氏。3年ぶり入魂のニューアルバムをリリース!!(CD帯コメントより)
う〜ん、なんだかカッコイイ CD ジャケじゃないですか、机に向かって書きものをする仕事中の大人の男、という感じですね。おそらく ”地道な活動” をされているんでしょう、たぶん。で、このジャケ、なんだか見覚えあるなあ、と、気にかかっていたのですが、そーか、当方、エル・スール・レコーズ発売のホセ・アントニオ・メンデスのサード・アルバム・ジャケと対になってるんだあ、と、とあるお客さんに指摘を受け、気づかされたのでした。って、相変わらず意味不明、各方面に予め謝罪致します。すみませんね、ホントに…
と、いつもながら、大谷氏のCDを扱っていて、その音楽をキチンと紹介しようとは思うのですが、結局、のらりくらりとドーでもいいことを書いてお茶を濁すばかり、うまい言葉がドーにも出て来ませんなあ。今さらフォークやロック、ブルースの影響を聞いて取れます、なんて、口が裂けても言えないし、何を言っても見当外れという気もするし…。

通常、CDやレコードを紹介する際、いつ誰が何処で、どのような音楽的な背景において、どんな経緯で録音したか、という、そういうところから紹介するのが基本なんですが、大谷氏のCDの場合、そーゆーことを説明してみても、なんだか、無意味という気がしてしまいます。
やや、とっ散らかっているようにも聞こえる歌声と、歌われる言葉、生ギター or エレキギター、シンセ、アコーディオン、ピアニカ、ノイズほか、いろんな音色や響きやリズムが、どうにも一旦聴き始めてしまえば、そこに聞こえるすべての音が、当然なのかも知れませんが、あまりにも具体的に大谷氏そのものでしかないんだなあ、と納得するばかり。…ある意味、完璧なものがそこには聞こえるのでした。
か細いノイジー・ギターと不協和音を含みつつ擦り切れたように響くストリングス風シンセを背景に、ボクトツとセツセツのあいだ、歌う言葉の語感そのままに、籠もったフィンガーピッキング弾き語りを聞かせる冒頭曲から始まって、トーンを抑えたストラトキャスターと大正琴のようにきこえる鍵盤、ヴォリュームを絞って弾きまくるノイズギターを従え、音程や発声のバランスを微妙に崩しつつも、エモーショナルな絶唱を聞かせるラスト曲、アイリッシュと見紛うバラッド調まで、溢れる奇想とポエジー、ユーモアとメランコリー、応援歌風、数え歌風からエアースポットみたいな曲まで全10曲、う〜ん、やっぱり、大谷氏でしかありえない新作、としか言いようがないものがそこに聞こえるわけで、ある意味、孤高の存在ですな。
見渡してみれば、比較の対象が、どこにも見あたりませんよね…。でも、比較の対象がないということは、比較において初めて成立する”個性的”なんていうサモシイ形容には無縁、ということであり、それって、比較と消費ばかりの今の世の中にあっては、貴重なことなのかも?ですなあ…。

1.私のアトリエ
2.あなたの魔法
3.弱いプロレスラー
4.砂漠で隠れんぼ
5.さよならSong
6.アロエベラ
7.8人乗りのバス
8.いろんな歌
9.地道な活動
10.裸の王様


大谷氏・・ボーカル、ギター、ハーモニカ、カズー
とっちゃん・・ピアニカ、シンセ、コーラス(5)
後藤年朗・・ギター(2)(4)(7)(9)
熊坂るつ子・・アコーディオン(2)(5)(6)(8)
くす美・・パーカッション(1)(3)(5)(7)

青木麻衣子・・二胡(3)(6)
石川浩司・・パーカッション(3)(6)
佐藤幸雄・・ギター(5)コーラス(5)
松永明玄・・ベース(2)
浅地等・・ノイズギター(1)(10)

制作・荒野レコード
録音・MIX・マスタリング・菱沼健
ブックレット制作・安田昌功(原案・大谷氏)
写真・藤森暁・後藤淳子(P8)・とっちゃん(P7)

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