『チン・チャー・トイ・ウェ』タイトルの意味は “わたしのもとに帰って来て”>こちらがデビュー作だったハー・ヴァンの新作です(ベトナムでは2作目になるんでしょうか?US録音も幾つかある、という情報もby bunboniさん)!ファーストと同様、ベトナムで “ボレロ” とも呼ばれる1970年代前半(頃)に流行したレトロなバラード系情歌、古いヒット曲をピックアップしカヴァーした作品だということです(レー・クエン以来、大衆歌謡路線、実力派女性歌手達の常道となって来た観ある懐古調、ということに?)。加えて、南ベトナム〜サイゴン(ホーチミン)の情歌の雰囲気、浮遊感ある弦の音色が響く端正なバックにおいて、ひらひらと舞う蝶のようなコブシ使い〜カイルオン的な節まわしも随所に聞かせ、ハノイのそれとは一味違う、溶け入りそうなたおやかさ、柔らかさを聞かせてくれるところがやはり大きな魅力。出身はベトナム北部でありながら、>フン・ランの歌に憧れたというハー・ヴァンの、南ベトナムの伝統を引き受け昇華した歌い口が、やっぱり素晴らしいですね。そしてその伴奏、少しばかり懐古調にコダワリ過ぎたファーストより、現代の演奏作法に無理なく、ほどほどの郷愁やノスタルジーを汲み入れた音作りが、ハー・ヴァンの歌声を、より自然に響かせていると感じます。先に入荷したフン・ランの2014年作CDとともに、アジアの “歌謡曲” の一つの理想の境地を体現してくれるCDじゃないでしょうか?
感動させてくれるとか、深く印象に残るとか、そういうことじゃなく、透明な水面に揺れる陽射しのように、淡々と、ただそこに歌が聞こえている感じ、なかなか得難いことのように思えるのですが…。にしてもこの人、若いのか若くないのか、年齢不詳のたたずまいにも惹かれます。 >★