YUSUF AL-MANYALAWI / THE VOICE OF THE NAHDA ERA

manya300_0こっ、これは昨年の DUST TO DIGITAL LONGING FOR THE PAST に匹敵するかもしれない超弩級重量盤 10CDbox with 2books!〜同じくA.M.A.R.ファウンデーション(6000枚のSP音源を所蔵!)より、先にリリースされた>アブドゥル・ハイ・ヒルミ4CDに続くリリースとなります。で、ヒルミよりも10歳年上〜1847年生まれ1911年没、エジプトの知られざるシェイク、アラブ古典音楽男性歌手ユースフ・アル・マンヤーラウィの貴重な録音集です(以前、Club du disque arabe で1枚だけ出てた人ですね)。鑞管&SP音源復刻ですが、一曲の長さが10分超えの曲も多く収録されています(続きものSPアルバム音源でしょうか、それとも12インチSP?ともあれ、組ものであることは確か)。
19世紀後期のエジプトはムハンマド・アリー朝によりオスマン帝国の影響から切り離されたものの、スエズ運河の開通により実質的なイギリスの植民地となった時代。そんな背景においてアラブ諸国で起きたアラブ文化復興運動「アル・ナハダ(ナアダ)」の中で、アラブ古典詩の素養を積み、古典旋法マカームを駆使し即興的に聞かせる軽古典詩歌(アンダルースのウマイヤ朝起源とされる)ムワシャッハの、新たな表現を広げたのがこのユースフ・アル・マンヤーラウィだったようです。なのでオスマン帝国〜トルコ古典音楽の影響の名残、その後のウンム・クルスームらにも継がれて行く古いムワシャッハの感覚はもちろん、エジプトの俗謡的な要素も透けて見えるでしょうか。アブドゥル・ハイ・ヒルミ同様、19世紀以前のアラブ歌謡と、20世紀に興ったアラブ・ポピュラー音楽を橋渡しした重要人物であることは確か。加えて、世界でも最も早い時期にレコーディング歌手として名を成した音楽家の一人であることも確かでしょう。
〜アラビア語320ページにわたるフルカラーブックレットと、その簡易版の英語、仏語版ブックレットも付属。おそらく、すべての曲が初復刻初CD化!美麗な紙ポシェット入りの10枚、そのCD一枚一枚の違い、その味わいのあり方は未だおぼろげ(〜歌がめちゃくちゃ上手いのはわかりますが)、というのが正直なところ。でも、そのおぼろげさを超えれば、19世紀以前のアラブ音楽の姿を掴めるような気もするのでした。そんな意味も含めて、この冬の長い夜にこそ挑みたい大作であることは間違いありませんね(と思いつつ試してみると…、これがやや小さな音量で聴いていると、実に気持ちのいい眠りに、千夜一夜の夢に誘ってくれます?なんと豪華な眠気?)!

*こちらで試聴出来ます。>http://www.amar-foundation.org/cd-yusuf-al-manyalawi/
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