ヤニス・ツィアディス、1976年アテネ生まれ、心臓病研究者、医師としても有名だそうですが、幼い頃から音楽好きで、ギター、ブズーキ、ピアノを習得、かたや文学にも傾倒、これまでに短編小説集を著し、作詞作曲の分野でも知られた存在とのこと。
で、そのヤニス・ツィアディス著、最近作となる小説『テケの少女』は、20世紀初め、ピレウスやドラペツォナといったアテネの外港地帯において、阿片窟と並び建っていたという娼館に生きた一人の少女の物語だそう。時代背景への取材考察に忠実なフィクションとして、ギリシャではそれなりに話題を呼んだようです。
そして本CDは、年若い娼婦であり、歌い手でもあった少女を主人公に描いたその小説の内容、イメージに沿って制作録音されたアルバムとのこと。
著者のヤニス・ツィアディス自身、加えて、イリアス・アンドリプール(曲)、ニコス・タタソプロス(詞)によって作詞作曲された、ここに並ぶ 11のレベーティカ曲は、小説同様、初期ピレウス派レベーティカへの造詣、当時のアテネ外港地帯のアンダーグラウンドな風俗への理解によって生み出された11曲、ということになるんでしょう。そんなヤニス・ツィアディスらの楽想や詩想を体現するにふさわしい、カテリーナ・ツィリドゥやイウリア・カラパタキ!アドニス・クシダリスはじめとする、現ギリシャ歌謡シーンでも有数のレベーティカの歌い手が集ったアルバムとして、オススメしてみたいと思います。
が、例えば、その飾らない歌のあり方、あるいはギリシャ的弦楽器によるシンプルな伴奏とも(ディミトリス・ミスタキディスがギターで全面参加!)、もとより録音は新しいし、ネオ・トラッドな雰囲気を通過しているようにも聞こえるのですが、もし、20世紀初頭の機材、録音環境でこの歌と演奏がSPとしてプレスされたなら、いったい、どんな空気感がそこに広がるのか?ちょっと興味深いなあ、と、ギリシャ音楽の過去と現在のつながり、もしくは微妙な歌心の変化、というものを意識させられるアルバムでした。
1 Katerína Tsirídou / Πενήντα Χρόνια Στάχτη Κι Αλάτι
2 Antónis Xintáris / Κοκκινιά
3 Sotíris Papatragiánnis / Έγκλημά Μου Η Προσφυγιά Μου
4 Lákis Papadópoulos / Βούρλα (Κρατικά Πορνεία)
5 Sotíris Papatragiánnis / Καλέ Μου Κόσμε
6 Katerína Tsirídou / Μανταλιώ Και Δραπετσώνα
7 Spýros Patrás / Πειραιά
8 Giánnis Charalampákis / Πάρε Με Φως Μου
9 Katerína Tsirídou, Antónis Xintáris / Το Μπλόκο
10 Ioulía Karapatáki, Antónis Xintáris, Thodorís Xintáris / Οδοιπορικό
11 Giánnis Tsiantís / Έπεσε Βροχή Κι Αγέρας
Guitar; Dimítris Mystakídis
Bouzouki & other stringed instruments ; Mihális Paoúris
Bouzouki & other stringed instruments ; Níkos Tatasópoulos