元来、アムハラ人の世俗音楽として、大道や酒場で擦弦楽器マシンコや竪琴のクラールを弾き語り、風刺と即興をとりまぜ俗謡を演じた吟遊詩人アズマリ、そんなアズマリ歌謡の現在的な姿を代表する女性歌手のひとり、イェジナ・ネガッシュの新作です。
90年代から歌い出したようですが、ムラトゥ・アスタッケの09年作や、>こちらエチオピークス 2 (1997) でも歌っていた人。ソロ・アルバムとしては、これまで当方に入荷したことはないものの、ネット上で見る限り、09年にファースト(?)アルバムがあり、そして、久しぶりのセカンド(?)となった19年作はかなりのヒット作だった模様、続く新作が22年の本作ということになるかと思います。
それにしても、この細密画のようなジャケでは、ヴェテランぶりを強調しているのか、歳よりも老けて見えるような気もしますが(今のところ年齢不明)、クリップを観た感じでは50代前半ぐらいかなあ、とは思いますが、それはともかく、なんといってもその、ちょっと枯れたような、サビのある節まわしが素晴らしいですねえ(エチオピアにありがちなエコーかけヴォーカルじゃないのが、またイイですね、というのはEXPさんのご指摘)。
大小太鼓の変拍子に乗せ、いかにもアズマリらしい説き聞かせるような調子で、細やかな節まわしを重ねて行くその歌声に、擦弦マシンコの細かにウネる演奏が重なり(時に竪琴クラールや縦笛ワシントも加わり)、複雑な重唱を演じているような感じ、やっぱりアズマリならではのものと感じます。
白眉はやっぱり2曲目表題曲、ブルース・フィールが漂って来るようなアレンジが印象的、ミディアム・スローの迫力あるナンバーで、マシンコに加えクラール&ワシントも並走する中、誰なのかわからなくってちょっと悔しいのですが、叫び訴えるような調子の迫力あるメリスマ男声との共演長尺曲、入れ替わりディープな歌を交わしつつ、ラストはともに歌ってアズマリ酒場ブールス・ジャム状態に雪崩込んで行くのでした…、モー久々興奮してしまいましたよ!
1. Awiy (አዊይ)
2. Etege Tehay’tu (እቴጌ ጠሀይቱ)
3. Wey Harar,Wey Dire (ወይ ሀረር፣ወይ ድሬ)
4. Azenebew Marun (አዘነበው ማሩን)
5. Ankober (አንኮበር)
6. Meheja Siyasatagn (ምሄጃ ሲያሳጣኝ)
7. Tinit Aradawochu (ጥንት አራዳዎቹ)
8. Ye’Emnete Botanew (የእምነቴ ቦታነው)
9. Ethiopiaye Endet Nesh (ኢትዮጵያዬ እንዴት ነሽ)
10. Temeker (ተመከር)
11. Enameginachew (እናመስግናቸው)