TARKAN / AHDE VEFA

ahdevefa_kapak全国555人のタルカン&全国55人のゼキ・ミュレン・ファンの皆さま、大変お待たせしました。「トルコの及川光博」ことタルカンの5年ぶりの新作はなんと芸術歌謡「サナート」のカヴァー集です。

サナートは、オスマン帝国の宮廷で活躍していた古典音楽家たちが、1923年の帝国崩壊とともに野に下り、イスタンブル新市街ペラ地区の高級ナイトクラブで歌い始め、次第に歌謡曲化したもので、映画「クロッシング・ザ・ブリッジ」にも出演していた女性歌手ミュゼイェン・セナールや、タルカンの先達にあたる女装歌手「トルコの美輪明宏」ことゼキ・ミュレンが創始者と言われています。今もイスタンブル新市街の老舗メイハネ(居酒屋)に行くと、流れている音楽はほぼサナートです。

90年代末にはエジプトのアムル・ディヤーブの影響を取り入れた汎地中海中東サウンドで全世界ブレイクしたタルカン。その後2000年代には全編英語のポップアルバムをリリース。逆に近年はアラベスク(労働者階級の演歌)やテュルキュ(民謡)の曲をカヴァーしたりと伝統回帰の面も見せていました。

そのタルカンが満を持してリリースするサナート・アルバム。おなじみミュニール・ヌーレッティン・セルチュークをはじめ、サーデッティン・カイナクやサラーハッティーン・アルトゥンバシュらの全13曲を重厚なオーケストラを従えた格調高いサウンドをバックに、いつもの甘い声で歌っています。しかし、ここまで本格的に作るとは! 海外で売ることなんてまるで考えていない。

「サナートをこのまま廃れさせるわけにいかない」という「でも、やるんだよ!」精神でしょうか?

まるでゼキ・ミュレンが乗り移ったような妖しい歌声に、「気持ち悪い」と拒絶反応を起こす人も多いかと思いますが「嫌よ嫌よも好きのうち」ですよ! とにかく今年最大の問題作です。

追記:タイトルの「AHDE VEFA」はググったのですが、英訳してもラテン語で「pacta sunt servanda」と翻訳されます。これは「合意は拘束する」「合意は守られなければならない」というローマ法の言葉だそうです。この場合、一体どういう意味になるのかどなたか御教授下さい。

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