仏BUDAレーベルの快挙?マグレブのユダヤ系音楽シリーズ、まだまだ続いています。この新譜は、モロッコのアラブ=アンダルース音楽の流れを汲むユダヤ系自作自演男性歌手=サミィ・エル・マグレビ(1922-2008)のベストCD(1940-60年代録音集)です。ウードを弾き語り、モロッコにおけるポピュラー音楽としてのアラブ=アンダルース系シャアビを録音し大きな人気を得ました。植民地支配への抵抗を盛り込んだ歌などによりモロッコでの人気は非常に高かったのですが、イスラエル建国後からほどなく、50年代にはパリへ移り、自らのレコード会社サミィフォンを設立、録音を続行し、60年代にはカナダにも長く滞在し音楽活動を続けたそうです。そして67年にはユダヤ教のラビになり、宗教的な歌をレパートリーとし、一時的にマグレブ系の聴衆達から反発を買うものの、相変わらず彼のポピュラーなテイストを備えたシャアビは人気を保ち続けることになったそうです。ピアノやカヌーン、擦弦アンサンブル、ダブルッカ等から成るオーケストレーションをバックにウードを奏でつつ、張りのある中域の男性的な発声と、いにしえの格調を感じさせるメリスマにおいて、アラブ=アンダルース・ベースの大衆歌謡をタップリと楽しませてくれるCDとなっています。オススメできます。
● サミー・エル=マグリービは1922年、モロッコ生まれ。同地のユダヤ人街で親しまれていたアラブ・アンダルース音楽に小さな頃から魅了され、ウードを手にした。20歳で音楽に専念し、古典曲とともに独特な自作曲もうたい、すぐに人気を獲得。その後、パリで自身のレーベルを興すなど積極的に活動した。60年代にカナダへ移住後は宗教的な活動も行ったが、その名声が衰えることはなかった。本作はそんな彼の初期録音を集めた1枚。ウードの弾き語りからピアノやアコーディオンを入れたモダンな伴奏がついた曲まで、キッパリとした歌い口で緩急自在なコブシを聴かせてくれる。当時のパリにおいてこれほどスケールが大きく、かつ高度に完成されたマグレブ音楽は、他に存在しない。(メーカーインフォより)