★ルディー・スミス・カルテット『スティル・アラウンド』
エム・レコード「スティール・パン」シリーズ第二段
スティール・パン・ジャズ from 1984
スティール・パンによるジャズの演奏を開拓したイノヴェイターであるトリニダード出身のパン・マスター、ルディー・スミスが、モダン・サウンド・クインテット解散後に満を持して発表したソロ名義ファースト・アルバム。汎ヨーロッパ的オリエンタルなアレンジが施され、全編で淘汰された感の漂うスティール・パンの妙技を聴かせるクールこのうえない作品。スティール・パン・ジャズというなかなかお目にかかれない編成だけでも聴く価値大。
*英語・日本語解説
*特製紙ジャケット
*96khz/24bitデジタル・リマスター
モダン・サウンド・カルテットはその後ディスコ/レゲエをフュージョンした大所帯のダンス・バンド、モダン・サウンド・コーポレーションとなり、70年代を通してヨーロッパ中をツアーした。その反動から、ルディー・スミスは自身のルーツであるスティール・パン・ジャズ、小編成での演奏に再び向き合うこととなった。そして83年に結成したのがルディー・スミス・カルテットであり、完全なジャズのセットでスティール・パンがリードとなる最初のアルバムとされる(*注)この『スティル・アラウンド』を録音した。ソロ名義のリーダー作は彼の長いキャリアでも初めてのこと。カルテットはオル・マティエセン(ピアノ)とニールス・プラストルム(ベース)、フリー・ジャズでも知られる北欧で活躍した南ア出身の黒人ドラマー、ギルバート・マシューズがバックを固めた。スミスによれば、特にマティエセンがスティール・パンの音色を活かす独創的なアイデアを出して録音をサポートしたという。本作がヨーロピアン・ピアノ・トリオのような静かに張りつめた空気を持つのは、これらバッキング・メンバーによるところが大きい。『スティル・アラウンド』のオリジナルLPジャケットにはスヴェン・アスムッセン、リチャード・ブーン(デンマークで活躍したソウル・シンガー)等の献辞が掲載されている。
*注:それまでのアルバムではロック、ソウル、ラテンのレパートリーを挟み、ジャズ一本で通すことはなく、トリニダード出身のパン・マンでは初の試みといわれる。高度な演奏技術を必要とする。
ルディー・スミスとは?
ルディー・スミスはトリニダードのポート・オブ・スペイン生まれ。1950年、7歳でスティールバンドに初参加、8歳で自らのバンドを結成した早熟のパンマンだ。当時トリダード最高のバンドのひとつといわれたメリー・メイカーズ・スティールバンドのメンバーとして62年に初の海外遠征を経験し、ドイツの米軍キャンプを中心に、ヨーロッパ諸国と北アフリカをツアーして2年間を過ごす。64年の帰国後、ヴァイブ奏者のミルト・ジャクソンやボビー・ハッチャーソン、また、オスカー・ピーターソンやジョン・コルトレーンにインスパイアされ、スティール・パンをリーダーにしたジャズの演奏を始め、最初期のスティール・ジャズ・コンボである自身のバンド、モダン・サウンド・カルテットを結成。スティール・ジャズの可能性を拡げるためトリニダードを飛び出し、アメリカ、カナダ、ヨーロッパのジャズ・フェスティヴァルで演奏し、68年にはスウェーデンに移住して新生モダン・サウンド・カルテットを結成した。
この新生モダン・サウンド・カルテットがクインテットとなった71年にアルバム『オティンク』を録音(発売は72年)。70年代後半にはバンドの発展形であるモダン・サウンド・コーポレーションでディスコ/レゲエのフュージョン作品を発表。70年代を通して多くのツアーを行った。
80年代に入ってからは自らの愛する音楽、音楽的探求のルーツであるスティール・ジャズの演奏に再び向き合い、83年にルディー・スミス・カルテットを結成。初のリーダー名義アルバム『スティル・アラウンド』を発表した。彼のカルテットはその後も複数アルバムを発表し、ヨーロッパ諸国をツアーしてスティールパンの普及に貢献。特にデンマークとその周辺諸国のスティールパン・シーンには関わりが深く、数多くのスティール・パンの実地制作(デンマークでは殆どのパンが彼の制作といわれる)、演奏指導を行ってその特異な楽器を普及させ、北欧スティールバンド・シーンの父、またパン・マスターとして敬愛されている。現在はデンマーク在住で、ヨーロッパ中を演奏/レクチャーに回る多忙な日々を送っている。尚、トリダードの偉大なパンマン、アール・ロドニーは40年来の旧友である。
TRACKS:
1. Blues L’Armoise
2. Ursia
3. Elise
4. Blues for Bradick
5. Be Bach
6. Still Around
7. El Vito
〜以上、メーカーインフォより