…いかにもキューバの爺さんと見受けられるCDジャケに写る男、メドロ・マデーラっていったい誰? ルーベン・ブラデスがプロデュースした謎のソネーロ? とか思いましたが、違いました。この爺さんは ルーベン・ブラデスの “オルター・エゴ” のイメージだというルーベン側の説明があります。ということは、別人格(オルター・エゴ)をルーベンが演じている、ということになるんでしょうか? 演じているうちにこの爺さんになり切って歌っているさまが伝わります。
ま、流石、役者ですねえ、役、というか他人格になり切れる人間かも知れませんね。だって、声も節まわしも違いますよ、いつもと。ま、歌い手にしても、役者にしても(政治家にしても?)、観衆の前では一貫性を持った一つの個性、というかキャラを演じている部分もあるでしょうから、ルーベン自身にとっては、あるいは、どうということもないのかも知れません…。
しかし、この爺さん、なかなか頑固そうな顔しているし、なるほど歌ったら、こういう声だろうなと納得さられるところもあります。別人になりきっているルーベン、ちょっと喉を絞ったキューバン・ソン、もしくはソン・モントゥーノにピッタリのコクのある声を聞かせて、堂に入っていますねえ。ロベルト・デルガド(ベネズエラのラテン・ビッグ・バンドのリーダー、ここ数年のルーベンの堰を切った活躍を支えている人物ですね)のディレクトする伴奏も、なんだか40年代のソノーラ編成をイメージしアップデートしているような雰囲気? なかなかイカシテます。
実際、2曲めはセステート・アバネーロの持ち歌、3曲めはソノーラ・マタンセーラ、4曲めはアルセニオ楽団…、という具合のレパートリーが続きます(冒頭曲はウィリー・ロサリオですけど…)。それにしても、ルーベンの長年の憧れが透けてみえるような選曲&別人格?ルーベンも既に70歳ですから、ここでは、サンティアゴ辺りで生まれた元農夫、歌い続けて早30年、みたいな、ちょっと運のなかった70代を過ぎたソン歌いを演じている雰囲気が、よくよく伝わって来るのでした。
で、自分は好きですねえ、こういう歌い口。なので、もう自分の中では、このジャケに写っているメドロ・マデーラが歌っているということを納得して聴きました。というわけで、突然、キューバから現れた無名高齢歌手、メドロ・マデーラ! 近年のラテン新譜(去年の5月発売)では、トップクラスに好きかも知れません。
にしても、このCDのどこにも “RUBEN BLADES”の名前が入ってなかったら、もっと良かったかも?騙されったかったなあ…
1.El Tiempo Será Testigo
2.¿Cómo Está Miguel?
3.Ya No Puedo Creerlo
4.El Panquelero
5.La Caína
6.Me Tenían Amarra’o Con P
7.Levántate
8.La Muñec
Medoro Madera (Rubén Blades) – voz principal, coros
Roberto Delgado – dirección, baby bass, bajo eléctrico, contrabajo y coros.
Juan Berna – piano.
Marcos Barraza – congas.
Carlos Pérez-Bidó – timbales.
Raúl “Toto” Rivera – Bongó, campana, güiros y maracas.
Ademir Berrocal – congas, timbales, bongó y campana.
Juan Carlos “Wichy” López – trompetas.
Alejandro “Chichisín” Castillo – trompetas y trombones.
Francisco Delvecchio – trombón.
Avenicio “Pin” Núñez – trombón.
Carlos Ubarte – saxofón (soprano, altos, tenores y barítonos) .
Luis Enrique Becerra – teclados.