80年代というディケイドは、破壊的なまでに日本を変えた。いま昔の写真を見てみると、60年代も70年代も、まあ、人びとの暮らしは、そんなに大きく変わっていないように思える。が、80年代後半になると家や、部屋や、持ち物や、街並みや生活が、何か根底から生まりかわりはじめ、90年代にはすっかり別の惑星だ。その、残忍なまでの変化のなかを日本のアンダーグラウンド・ミュージックがどのように考え、行動し、そして、どのように生き、死んだのかを思うとき、じゃがたらというバンドは外せない。言うまでもなかろう、80年代のポストパンク時代、もっともインパクトのあったバンドのひとつだ。
そして、畑仕事の男の姿がでーーんと表紙に写っている本書。じゃがたらのギタリストだったOTOが自身の半生を語った、ele-king booksの11月26日発売の新刊、『つながった世界─僕のじゃがたら物語』である。「僕はじゃがたらというバンドでギターを弾いて、そして今、僕は森を歩き、田植えをしている……」、序文でOTOがそう語るように、本書では、じゃがたら時代の多くのエピソード、江戸アケミとの死別、その後のソロ活動およびサヨコトオトナラでの活動、そして熊本に移住してからの農作業に励む現在が赤裸々に描かれている。あー、たいへんなことはあれど、人生とはこんなにも自由。農的な暮らしがいろいろなところで語られている現在だからこそ、ぜひ、読んでいただきたい。これはひとつの生き方であり、OTOにとっての「じゃがたら物語」である。
今の僕は、ミュージシャンとしてさらなる進化を遂げるために、あえてギターを弾かない生活を送っているけれど、日々「じゃがたらの音楽って素晴らしいな」って思っている。お茶の剪定作業をしていときも、田植えをしているときも、森の手入れをしているときも、散歩しているときも、僕の周りには、いつだってじゃがたらの音楽が鳴り響いているから。
──本書より
80年代を疾駆した伝説のバンド、じゃがたら。
そのギタリストOTOが語る過去、そして、ほぼ自給自足のいまのくらし。
80年代の日本を疾駆した、伝説のバンド、じゃがたら……。そのリアルかつ予見的な言葉、態度、そして圧倒的なパフォーマンスによってバンドを導いたカリスマ、江戸アケミ亡き後も、彼らの音楽はずっと聴き継がれ、語り継がれている。
じゃがたらは、音楽的にはアフロビート、ファンク、ダブの異種交配に特徴を持っている。その音楽面において重要な役割を果たしていたのは、ギタリストのOTOだった。彼がバンドのダブのセンスを注ぎ、ワールド・ミュージック的ヴィジョンをもたらしたとも言えるだろう。
本書はOTOが赤裸々に語る、彼の自叙伝であり、じゃがたらの物語である。そして、いまは東京を離れ、熊本の山で農業をやりながら、ほぼ自給自足の暮らしをしている彼からのメッセージだ。
世間を騒がせたじゃがたらのファンをはじめ、オルタナティヴなライフスタイルを模索している人にも必読の一冊。
■じゃがたら
80年代に活躍したファンク・ロック・バンド。1979年にデビューし、フロントマンの江戸アケミが、ステージ上で蛇やニワトリを生で食べ、放尿、脱糞などを行ない、マスコミから“キワモノバンド”として注目される。こうしたイメージを吹っ切るかのようにレコーディングに専念し、1982年に1stアルバム『南蛮渡来』をリリース。ジャパニーズ・ファンクの傑作として高く評価された。1989年にアルバム『それから』でメジャー・デビューを果たしたが、翌1990年にアケミが自宅バスルームで溺死。永久保存という形で活動にピリオドを打った。
(以上、ELE-KING BOOK インフォより)
本体2,200+税
四六判 256ページ
2014年11月26日発売
ISBN:978-4-907276-24-9
■目次
1
古い記憶
ギターを弾く
ラジオを聴く
吉田拓郎にハマる
キャロル、シュガー・ベイブからミュージカルにATG
MARIA 023
2
じゃがたら
『南蛮渡来』のレコーディング
ザッパ的に言えば日本なんて
バビロンから抜け出せ
アケミの分裂
君と踊りあかそう日の出を見るまで
新生じゃがたら
JBよりもフェラ・クティ
エンジニアの役割
「OTOは俺を殺す気か」
『ロビンソンの庭』の混沌
リズムセックス
〝あの娘〟の意味
アケミの言葉
メジャー・デビュー
東京ソイソース、アケミとの乖離
もういい加減にやめたい
苛立ち
つながった世界
中産階級ハーレム
脳みそはそよ風に溶けて
寿町フリーコンサート
じゃがたら最後の曲
アケミの死
ビブラストーン、雷蔵、Tangosへ
思い出深いソロ・ワークス
近田さん
陣野俊史『じゃがたら』
どっちの暮らしがリアルなんだ?
3
9・11
9・11後のアクション
サヨコオトナラ始動
自然のリバーブ
キョンキョンの朗読
音楽の新しい機能性
森へ
土と平和の祭典
あがた森魚さん
三つのグナ
踊るんだけど心は静か
中野のおっちゃん
鮎川さん、こだまさん
じゃがたらお春1979LIVE
ラビと出会う
グラウンディングの意味
モリノコエ
新たな音楽を求めて
3・11
それから
いずみ村の話
農園の日常
正木さんの「あなた」
みんなで「カンダナ」を歌えたら
結婚
今日もここまで来たのさ