NIKOS MAMANGAKIS, LIZETA KALIMERI ‎/ AIFNIDIASMOS …Eimai Treli Na S’Agapo

ニコス・ママンガキス(1929-2013)クレタ島レティムノ生まれの作曲家、ピアニスト、ドイツで西洋古典を学びましたが、ギリシャのリズム、メロディー、伝統楽器に即した曲を書くことも多くありました。映画音楽や舞台音楽の世界から、クラシック、実験音楽の分野でも作品も残しています。60年代後半以来、リーダー作として、その名が冠されたコンポーザーズ・アルバムだけでも、50以上の作が有にあるんじゃないでしょうか?
自分が観たことのある映画作品では、ヘルツォーク、じゃなくてピーター・ゼアーの方の『カスパー・ハウザー』(1993)とかが、このニコス・ママンガキスのスコアだったようです(地味に印象に残っていた映画だったので、蛇足ながら…、とはいえ、音楽までは憶えていないのですが)。ま、それはそれとして、本CD、ラストのインスト曲以外はすべて、当店ではお馴染みの実力派女性歌手、リゼッタ・カルメリが歌っていて、きっとレアーなんでしょうね、お値段も張りましたが、つい仕入れてしまった次第です。
すべての曲をママンガキスが作曲していて、夭逝したギリシャの後期ロマン主義女流詩人、マリア・ポリドゥーリの詩をリゼッタが歌う3曲から始まり、次いで現代ギリシャの女流詩人アシナ・カラタラキの作詞3曲、そして、前世紀半ばに自死したギリシャの詩人、幻想小説家にして同性愛者のコミュニスト、ナポレオン・ラパシオティスの1曲に、詠み人知らずの1曲、おしまいに、銃殺された詩人、スペインのフェデリコ・ガルシア・ロルカのギリシャ語訳された詩を3曲と、すべてリゼッタが歌っています。
タイトルは『驚き、あなたを愛することに夢中だ』と、ロルカの詩から取られました。愛想のないCDジャケットに配された写真の、向かって左がリゼッタ・カリメリですね。そして、くすんだような古い写真はマリア・ポリドゥーリその人です。
それにしても、ちょっと不思議な歌と演奏です。どこか、輪郭のはっきりとしない変拍子系のオーケストレーション、やや流動的に聞こえるギター、ブズーキによる弦楽器類のアレンジにしても、詩の言葉の語感が、旋律の中に浮き沈みしているようなリゼッタの歌のあり方にしても、少なくとも歌と弦楽器類に関しては、かなりの部分、即興を交えた録音じゃないかと思われます。ママンガキス作曲のオーケストラによる主題的な旋律演奏の反復に身を任せながら、詩の言葉の繋がりを優先するようなリゼッタの歌声は、時に伴奏から浮き上がり不協和とも聞こえますが、時に情緒を抑えた淡々とした節まわしの先に、思いがけず深い情感を結ぶこともあるでしょう。
あるいは、どこかからか、前世紀の不幸な詩人達の、彷徨える魂が舞い降りて来るような錯覚を体験できるかも知れませんね…、なんて、言ってみたくもなる、ちょっと捉えどころのないアルバムなんですが、繰り返し聴いても、全体の印象が曖昧なまま、ある意味、フリーフォームなギリシャ歌謡、そんな風にも言える異色作かも知れません?
 
 
1 Είμαι Τρελή 4:17
2 Ω, Μη 3:35
3 Ω, Χαμηλώστε 2:48
4 Η Καρδιά Μου 2:56
5 Νύχτα 3:07
6 Ομπρέλα 3:00
7 Ένα Τραγούδι 3:34
8 Το Παληό 4:06
9 Ναυαγός 3:40
10 Μεσ’ Των Ματιών Σου Τα Νερά 3:11
11 Αιφνιδιασμός 2:31
12 Οι Έξι Τσιγγάνες 2:29
13 Ο Γόης, Ο Κυρ Άνεμος 3:10
14 Το Ζεϊμπεκάκι 2:26
 
Acoustic Guitar – Panagiótis Papaïoánnou
Bouzouki – Dimítris Lívanos
Classical Guitar, Acoustic Guitar – Manólis Androulidákis
Music & Orchestration by Níkos Mamangákis
Vocai by Lizeta Kalimeri
Lyrics by María Polydoúri (track 1.2.3)
                Athiná Karataráki (track 4.6.7.10)
Viktória Makrí (track 5)
                Napoléon Lapathiótis (track 8)
                Poet unknown (track 9)
                Federico Garcia Lorca (track 11.12.13)
Translated by Xenofón Kokkólis (track 11.12.13)


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