MUGA / CHANTS DE FEMMES DES ASTURIES

スペイン北西部、アストゥリアス州の女性歌手にして各種打楽器奏者、クララ・ディアス・マルケスをフィーチュアー、ブルターニュのヴァイオリン奏者、トマス・フェルダー、同じくブルトンのギタリスト、マルタン・シャプロンという3人によるユニット&ゲスト4人による、“ムガ” のファースト・アルバム〜先日、松山晋也さんにオススメいただいたアイテムです。今年のユーロ・トラッドもので一番の推薦盤とのことでした。なるほど一聴して、まず伝わって来るのは、クララ・ディアス・マルケスによるアストゥリアスの歌の強烈さ、ということになるでしょうね…。
ビスケー湾の北面に突き出たブルターニュ半島と湾を挟むようにして、大西洋に突き出したスペイン北西部のアストゥリアス州は、スペイン語(カステリャーノ語)や、隣接するガリシアのガリシア語も公用語とされていますが、アストゥリアス語を解す約45万人の住民も含む人口100万ほどの自治州とのこと。その起伏の多い海岸線と、内陸の険しい山地によって、ローマ時代〜西ゴート時代を通じて、中央の実効支配が届かなかった地域だったそうですが、45万のアストゥリアス語の話者は、現在も、主にその急峻な山間部の集落に居住しているそうで、本CDの歌い手、クララ・ディアス・マルケスもそんな山間の出身者ということになるんでしょう。
察するところクララ嬢の歌声は、ブルターニュやガリシアとも共通するところもある大陸ケルト系の伝統唱法に準じていると聞こえますが、youtube で観ると、(ブルターニュ勢のフィドル&ギターの男性二人の本格的な愛想の無さに較べ)、かなり親しみやすい雰囲気の人柄と映ります。が、しかし、打楽器(パンデイル)を叩きながら歌い出すと、コレがナカナカ凄いんですね。野趣満点の歌声、まさに “急峻な山間部” に伝えられて来たアストゥリアス語の地声、という雰囲気がキッチリ伝わって来ますよ(以前やっぱり、松山晋也さんにご教示いただいたポーランドの>カペラ・マリゾウあたりにも類する雰囲気と聞こえます)。
加えて、トマス・フェルダー&マルタン・シャプロンのフィドル&ギター演奏もシンプルかつフリーキーかつノイジー(&無愛想…)、そして、ひたすら反復を繰り返しつつ、微妙に移ろう変奏&音響においてクララ嬢の歌声と交わり、予定調和からはほど遠い、始原的にさえ聞こえる “大陸ケルト性” を獲得していると言ったなら、穿ち過ぎでしょうか?

ま、決して耳に馴染みやすくて愛想のイイ演奏でも歌でもありませんが、けれども確かに、これはスリリングであり未知のものとしての、アストゥリアス / ブルターニュの “トラッド” である、と言うことはできると思います。お試し下さい。

1.Añada de Viodo 04:00
2.Ramu La Madalena de Tresmonte 05:18
3.Dances d’Enu y Sardalla 05:34
4.Ramu a la Virxen de la Flor de Pría 04:29
5.Los Titos de Benllera 03:43
6.La Siega Trabáu 04:43
7.Xota’l Corralín 04:23
8.Son d’arriba d’Arbás 05:32
9.Muñeira Trabáu 04:02
10.El Corri-Corri 03:45

Clara Diez Márquez : voz, pandeiru, pandereta, pandoriu, bombu
Thomas Felder : vigulín
Martin Chapron : guitarra

Roman Baudoin : gaita de rabil 7, 10
Lorena Xedré : voz, pandeiru, pandereta 2, 4, 6

Arreglos: Muga, Roman Baudoin (4, 8)
Lletres: populares salvo 9 (Lorena Xedré y Clara Diez Márquez)

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