このジャケット、ヴァイオリンを持つ後年の写真を見ると、なんだか南インド古典のアルバムみたいですが、レユニオン人口の3割がインド系とはいえ、そういうことではありません。セピアなポートレイトの方、往年のダンディな姿の方がこのCD3枚組の内容に沿っているかも知れません。リュック・ドナット(1925-89)“セガの王様”と呼ばれたヴァイオリニスト/コンポーザーで、この人をしてレユニオンのセガは形を成したとされます。ジュール・アランダとも共通するアコーディオン・コンボにヴァイオリンが加わった50年代までの録音、ラテンやジャズの風味が効いたトロピカル・スタイルが楽しい60年代録音、そしてフレンチ・ポップスの感触を取り入れたり、大胆にジャズ風のアドリブも盛り込んだ70年代以降の録音~全68曲、その長いキャリアをカヴァーした3CDセットとなっています。68曲、全然ヘヴィーということもなく、リラックスして聞けてしまうところは他のセガ・アーティストとまったく変わりませんが、この3CDを通して一人でセガの歴史を垣間見せてくれるそのさまは、まさに“セガの王様”というにふさわしい内容(80年代はジャズの人っていう観もなきにしもあらず、ですが…)!