LOUNES MATOUB / AU NOM DE TOUS LES MIENS

★ルーネス・マトゥーヴ 『わが愛する者全ての名において』

これから、なんだかシャアビは売れそうだと踏んだのか、ファッシフォン・レーベルが新たに復刻したCDは、なんとモダンなカビール・ソングの代表格、アルジェリアのボブ・ディランとも称されるルーネス・マトゥーブの、おそらく1990年代後半~晩年の作品です。以前はフランス盤CDでもリリースされていたようですが、永らく入手困難だったアルバムですね…。先に国内リリースのあった2CD『ラスト・コンサート・ライヴ』のみを聴いて、他のアルバムも欲しいなあと思っていた方に、是非オススメしましょう。1956年生まれ、1998年に地元アルジェリアで射殺されてしまったというマトゥーブですが、アルジェリアとフランスに住まうベルベル系のカビール人の生活や文化のために、政治的な内容も盛り込んだ歌 / シャアビをカビール語で歌った、プロテスト・シンガーの代表ともされています。が、そのプロテストの内容に関しては、勉強不足でよくわかりませんが、カビール人たちが置かれた状況や困難というものを知らずとも、この人特有の、クールでいて、のたうつようなコブシ使いで歌われるカビールの言葉を紡ぐ歌声が、ただならない説得力を持って迫って来るのも確かです。弦楽器マンドーラやバンジョー、そしてダブルッカ&タールという簡易な打楽器、間歇的に随奏や間奏を奏でるヴァイオリンや笛、というかなりシンプルなバックにしても、変化に富み、奥深い音楽性を感じさせてくれて、これは素晴らしいアルバム、と保証します。オススメします。

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