もう古い話ですが、アルゼンチン映画『12タンゴ』にも出演していた女性タンゴ歌手、リディア・ボルダの08年の3作目が初入荷となりました。ま、タンゴは当店的にはそれほどオススメしたこともないのですが、とあるお客さまに進められて聞いてみたら、この人はイイですねえ。所謂、あのリズムのハギレ良さを身上とするタンゴとはやや違っていて、かといって多くのネオ・フォルクローレ orネオ・タンゴのように、既存のスタイルから抜けだそうというのではなく、その中での自由というものを試みているように感じられます。
この作では、1970年代~アルゼンチンの軍政時代にフランスへ逃れギター弾き語りでタンゴを歌い続けた作曲家、フアン・タタ・セドロンのレパートリーを歌っています。リディア・ボルダのタンゴらしい歌い口をキープしつつ、どこか涼し気で、シックな歌い口が、タンゴ・ヴォーカルの一般イメージを柔らかく解きほぐしてくれますよ。ほとんどフィーリンですね(って、最近何でもフィーリンに聞こえる悪い癖が抜けません…)!ピアノと弦によるシンプルなバックの中で、過去を、そして現在を、時に悲哀を、時に望郷を、そして期待と失望を、淡々と歌っていると、そう感じます。オススメできます。