エレフセリア・アルヴァニタキ、この10月12日で62歳になったそうですが(オレより年上だ!)、その10月にリリースされた、おおよそ5年ぶりの20作目(ファースト・アルバムは1984年)の新作スタジオ録音アルバムがこちらで、タイトルは ”グレート・ジャーニー” といった意味だそうです。う〜ん、長旅をし続けて、今があるとうことなんでしょうか?ちなみにエレフセリアという名は “自由” を意味するそう。生まれはエーゲ海の東、トルコにやや近いイカリア島です。
今回、起用の作曲家(アレンジも)はテミス・カラモラティディス 38歳、作詞は女性リダ・ロマーニという二人で、テミスに関しては、>ナターサ・ボフィリウをデビュー以来(作詞家、ゲラシモス・エヴァンゲラートスとともに)フォローして来た作曲編曲家でありピアニスト、ほか、舞台や映画の音楽も多く手掛ける実力派(日本から遠く見ていても、その仕事のセンスの良さ、トラッドとポップの配合の良さは、注目すべき才かと思っています)。リダは2015年のエレフセリア作で作詞を手掛けたのが仕事始めと思われ、今作では全曲作詞を担うことになった注目株、と言っていいでしょう(ギリシャ歌謡の世界では、歌手とともに作曲家、作詞家の重要さは言わずもがな、今となっても作曲家や作詞家がリーダー・アルバムを制作している国は世界広しといえ、あまり例がないんじゃないでしょうか?)。〜今のところ、本作収録曲のうち唯一のクリップ(白黒映像)にエレフセリアと三人で和気あいあいと出演しています。
女王ハリス・アレクシウが2014年以来沈黙してしまっている今(15年にシングルが出ていますが、映画に使われた旧録でした。どうしちゃったんでしょうね、心配です。)、2番手と言ってもいい人気実力のエレフセリア・アルヴァニタキ、レべーティカのリバイバルを当時の新世代として担ったグループ、オキソドロミキ・コンパニアへ 1981年に参加し歌手としてデビューして以来、その歌声の辿って来た軌跡はまったくブレていない、というか、レベーティカからライカへの道筋の延長としてのギリシャ歌謡の今日的なあり方を担う存在として、本筋を行ってるように思いますがどうでしょう?
癖のない透きとおった声質は昔のまま、歌いまわしも素直で通りよく、ことさらコブシやヴィブラートを強調することなく、抑えの効いた歌声をやや高音域で柔らかく伸びやかに聞かせます。ハリスやダラーラスのギリシャ的メリスマ表現と較べるならば、物足りないという向きもあるようですが、この透明さは、ある種、ギリシャ島嶼部の民謡に通じるものがあるし、ハリスやダラーラスが表現することのできない情感を伝えてくれることもしばしば(ま、逆もありですが)、歌唱力はどう聞いてもトップ・クラス、身体性に通じるような個性と考えていただければいいんじゃないかと。あるいは現在、歌というものを大切に聞かせることにおいて、後続の若手女性歌手達が手本にしているのはハリスではなく、このエレフセリアの方が目につくような気もします。それは、実にゆっくりとした、ギリシャならではの時代の変化、なのかも知れませんが…、それだけじゃないような気もします。何しろ、ギリシャ歌謡の本筋はちょっとやそっとじゃ変わらないでしょうから。
とにかく、ギリシャの弦楽器、ブズーキやバグラマ、そしてギターやウード等に、ピアノ、擦弦重奏等を加えた伴奏の中からエレフセリアの歌声が伸びてゆくその先に、澄み切ったギリシャの海や空を見るような気がして、新作が出るたびに嬉しくなります。
1 Η Αρχή
2 Το Κλειδί
3 Κι Εγώ Που Έλεγα
4 Αν Βρεθεί Θεός
5 Του Κόσμου Όλου Οι Προσευχές
6 Οι Μνήμες
7 Ο Δραπέτης
8 Οι Μήνες
9 Τα Μεγάλα Ταξίδια
Executive Producer -Eleftheria Arvanitaki
Arranged By Themis Karamouratidis
Bouzouki, Baglama, Tzouras, Mandolin, Lute – Nikos Katsikis
Cello -Aris Zervas
Classical Guitar, Acoustic Guitar -Dimitris Siabos
Drums -Manolis Giannikios
Electric Bass, Double Bass -George Bouldis
Electric Guitar -Lampis Koundourogiannis
Percussion -Kostas Meretakis
Piano, Keyboards, Backing Vocals -Themis Karamouratidis
Viola – Freedom Toy
Violin – Theodoris Mouzakitis, Kostas Karitzis