ELEFTHERIA ARVANITAKI / 9 + 1 ISTORIES

E-ARVANIYTAKI20157年待たされたわけですね。>こちら 08年の “Kai Ta Matia Kai I Kardia” 以来のスタジオ録音新作です。 1984年のソロ・デビュー ( LYRA RECORDS から)以来、これが13作目のオリジナル・アルバム。以前は2〜3年毎にコンスタントにスタジオ作をリリースしてくれていたので、このブランクが何を意味するのか、ちょっと気になっていましたが…。前作まで長らく属していた UNIVERSAL 系列から、2012年設立の新興 MLK RECORDS に移っての新作(〜でも、MLKのレギュラープライスよりも3ユーロぐらいCDの値段が高いのは、ま、お金と時間をたっぷりかけて作った新作、ということになるんでしょう、きっと)。ま、仕切り直しということでしょうね。
冒頭、ヴァシリス・パパコンスタティヌ(1950年生まれ、ロック系大御所)とのデュオ以外はすべてエレフセリアが一人で歌っています。作曲はナタッサ・ボフィリーウの曲提供者 THEMIS KARAMOURATIDIS や、エレーニ・ツァリゴプールに多く曲を提供して来た>Nikos Portokaloglou、あるいは、やや若手SSW の Stathis Drogosis などなど、どちらかと言えばグリークロック / POP系の人脈が並びます。そして作詞ではハリスやディミトラ・ガラーニ、そしてこのセレフセリアにも多く詞を提供してきた女流の超売れっ子 Lina Nikolakopoulou (57歳) が目立つところ。
というよーなことは、ま、さておいても、これまでギリシャ人歌手としては珍しくも、サリフ・ケイタやセザリア・エヴォラやドゥルス・ポンテスやアルト・トゥンクボヤシヤンやブイカや、その他多くの国外アーティストと共演し、積極的にWOMADとかモントルーJAZZフェスとかに参加して来たエレフセリアですが(前スタジオ作はスペイン語ヴァージョンのアルバムがあったり、USやカナダや欧州各国でリリースされもしましたが)、この新作はグッとドメスティック(英語表記無し)。それも、まあ、MLK レーベルの意向かも知れませんが、でも、ギリシャ歌謡ファンとしてはこの傾向、歓迎したいところ(字も読めないギリシャ歌謡だからこそ、孤立したシーンだからこその面白さ、その洗練や活況があると言っても過言ではないわけで、…ま、東欧やトルコ、近東あたりとはどんどん交流して欲しいところですが)。
というわけで、本作、実にイイじゃないですか!余計なものが何もない(バルカン風はあります!)。エレフセリア本道の歌声がキッチリ楽しめるアルバムかと思います。流石、変に新しい音を作ろうとはせず、かと言って、中庸にとどまろうとするでもなく、新鮮でありつつも、デビュー以来のエレフセリアの歌に寄りそった音の感触がうまく練り上げられていて、実に伸び伸びとした歌が響きわたっています。
だいたいこの人の歌声それ自体は、ソロ・デビュー作から全く変わっていません。不思議なほど変わっていない。きめ細かく繊細でいて、どこか一本調子(そこにライカやレベーティカ風味が香るわけですが)。その一本調子の透明さ、とでも言えそうな魅力(昔のナナ・ムスクリーニあたりとも微妙にリンクしてしまう危うさはありますが、でもちょっと違う)を、このアルバムの制作姿勢は、決して曇らせてはいませんね。
ところでタイトルは『9+1の物語たち』とでも。で、意味はそのまま?〜9曲のオリジナル新曲と1曲の映画挿入歌 >”J.A.C.E.”(エレフセリアが歌ったもの)のリミックスが再録されました。


▽こちらは OST オリジナル

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