蒲田耕二, 選曲解説 『シャンソン拾遺集』

★Chansons de la France profonde sélectionnées par Kohji Kamata

日本でよく知られ、そして知られていない洋楽 “シャンソン”、その一番元気だった1950~60年代前半のシーンを俯瞰する画期的な編集盤!! 

“シャンソン” という音楽を聞いたことがない、という人はあまりいないと思います。でも、見まわしてみれば、シャンソンを熱心に聴いている、という人も、あまりいないように思います。
かくいう当店、ワールド・ミュージック専門店の看板を掲げているエル・スール・レコーズも、エディット・ピアフやダミア、あるいは、ジョルジュ・ブラッサンスやジャック・ブレル以外のシャンソン歌手を品揃えすることは稀であり、“シャンソン”というジャンルに関しては、それで充分と考えていました。
でも、本当にそれだけでいいのか?
シャンソンを60年以上聞き続けていらしゃる音楽評論家であり翻訳家でもある蒲田耕二さんと、個人的におつき合いさせていただいているうちに、その奥深いワールド・ミュージックへの造詣が、あるいは、世界中の “歌” というものへの透徹した審美眼が、シャンソンを通じて磨き上げられたものと実感するに及んで、それならば、蒲田さんが本当に信頼するシャンソンの歌い手の、選りすぐりの名唱を集めて、1枚のCDを作っていただけますか? というお願いに快諾を得て出来上がったのが、本盤『シャンソン拾遺集』ということになります。
その ” 拾遺集 ” というのは、もれ落ちてしまった曲を拾い集めたというよりも、これまで日本であまり紹介されることのなかった音源の中から、本CD仏語タイトルにあるように、“profonde” 〜つまり、深みのある名曲を集めるという趣旨を意味します。
近代シャンソンの揺籃となったモンマルトルから登場した歌手たち、戦後のシャンソンを刷新したセーヌ左岸派、あるいは、左岸派の革新性とモンマルトルの庶民性をあわせ持ち実社会にコミットしていった “シャンソン・アンガジェ” 、そして、戦前シャンソンの伝統を引き継いだメインストリームの歌手たち、と、1950〜60年代前半のシャンソン全盛期を飾った四つの潮流を俯瞰しつつ、本当にシャンソンを知るための25曲、わたしたちが知らなかったシャンソンの名曲が並んだ素晴らしいCDが出来上がりました。

*シャンソンを盲愛するのでなく、批判すべきところは批判し、時に流され忘れられようとしている名唱名歌について、ハギレよくも冷静に語る蒲田耕二さんの名調子!16P. 解説冊子がつきます。
*雲天の空から射す光…、もしかしたら、シャンソンってそんなイメージ? いつものように吉岡修さんに雰囲気のあるジャケトをデザインしてもらいました。
*そしてまた、いつものように森田潤さんの素晴らしいリマスターにおいて(購入したCD音源をご自分でリマスタリングして聴かれるほど、“歌声”というものにこだわる蒲田さんの助言もあり)、 “歌声” そのものの素晴らしさをじっくり味わえるCDとなっていることも、本盤の魅力かと自負しています。

*加えて、以下、蒲田さんからのメッセージです!
「このアルバムは、音楽を愛し、音楽の喜びをよく知っている人たちにこそ聴いていただきたいと思う。シャンソンなんて辛気くさいばっかりで、音楽にはあんまり明るくない人が文化的アクセサリーとしてたまに聴くアイテムだろ、とか考えてないですか? きっと認識を改めてもらえると思いますよ。」

*蒲田耕二
音楽評論家・翻訳家、愛媛県今治市出身 1940年生まれ 、東京外国語大学フランス語科卒、出版社勤務を経て1976年からフリー。
各種音楽誌でレコード / CD評を書き、NHKラジオで音楽番組の構成とDJを担当した。
著書に『サウンド&ヴィジョン』1998 『聴かせてよ愛の歌を―日本が愛したシャンソン100 』2007『歌劇場のマリア・カラス』2009 翻訳多数。
*ブログ “蒲田耕二の発言” >https://blog.goo.ne.jp/kohji-en

01 パナム/ジュリエット・グレコ
Paname (Ferré) Juliette Gréco / 1960
02 哀れなリュトブフ/ジェルメーヌ・モンテロ
Pauvre Rutebeuf (Rutebeuf/Ferré) Germaine Montero / 1956
03 サン・ジャック街/ジェルメーヌ・モンテロ
Rue Saint-Jacques (Mac Orlan/Marceau Verschueren) Germaine Montero / 1955
04 お前は誰にも似ていない/フランシス・ルマルク
Toi tu ne ressembles à personne (Lemarque) Francis Lemarque / 1953
05 ママン・パパ/パタシュー&ジョルジュ・ブラッサンス
Maman Papa (Brassens) Patachou avec Georges Brassens / 1954
06 踊り場タンポレル/パタシュー
Bal chez Temporel (Hardellet/Béart) Patachou / 1957
07 ぐれた男/ジョルジュ・ブラッサンス
Celui qui a mal tourné (Brassens) Georges Brassens / 1957
08 赤いポスター/モニック・モレリ
L’affiche rouge (Aragon/Ferré) Monique Morelli / 1961
09 人生は過ぎ行く/ピア・コロンボ
La vie s’en va “Et je t’aime” (Holmès) Pia Colombo / 1962
10 広場で/バルバラ
Sur la place (Brel) Barbara / 1961
11 チュイルリー/コレット・マニー
Les Tuilleries (Hugo/Magny) Colette Magny / 1964
12 マリア/ジャン・フェラ
Maria (Massoulier/Ferrat) Jean Ferrat / 1966
13 ムッシュー・ウィリアム/カトリーヌ・ソヴァージュ
Monsieur William (Caussimon/Ferré) Catherine Sauvage / 1952
14 オルガ/ジュリエット・グレコ
Olga (Plante/Aznavour) Juliette Gréco / 1965
15 死刑囚/エレーヌ・マルタン
Le condamné à mort (Genet/Martin) Hélène Martin / 1962
16 君がいなければ/ジャン・フェラ
Que serais-je sans toi (Aragon/Ferrat) Jean Ferrat / 1964
17 ゾン・ゾン・ゾン/ミシェール・アルノー
Zon Zon Zon (Vidalin/Datin) Michèle Arnaud / 1957
18 針仕事に精をお出し/リーヌ・ルノー
Laï Laï Laï “Tire l’aiguille” (Marnay/Barclay/Stern) Line Renaud / 1952
19 誇り高き人々/リュシエンヌ・ドリール
La valse des orgueilleux (Misraki) Lucienne Delyle / 1954
20 悲しい別れ/マルジャンヌ
Je veux te dire adieu (Aznavour/Bécaud) Marjane / 1954
21 君を待つ/シャルル・アズナヴール
Je t’attends (Aznavour/Bécaud) Charles Aznavour / 1963
22 秋の歌/ジャクリーヌ・フランソワ
Verlaine (Verlaine/Trenet) Jacqueline François / 1965
23 ブルーゼット/ジャクリーヌ・フランソワ
Bluesette (Thielemans/Saka) Jacqueline François / 1964
24 詩人の家/ギレーヌ・ギー
La mason du poète (Trenet) Guylaine Guy / 1957
25 浜辺のピアノ/シャルル・トレネ
Le piano de la plage (Trenet) Charles Trenet / 1958

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