チャラッチョウ・アシェナフィ、1966年エチオピア北部のタナ湖にほど近いゴンダル生まれ、デブル・テイバー育ち(ゴンダルやデブル・テイバーというタナ湖周辺の街は、マシンコ弾き語りによる風刺と即興の吟遊詩人、アズマリの伝統が最も濃く残された地の一つだということです)、若くしてアジス・アベバへ移り、アズマリベッド(民謡酒場みたいなもの?)で活躍するようになり09年にソロ・アルバムをリリース。その後、本作はもとより>こちら “ILILTA ! NEW ETHIOPIAN DANCE MUSIC” や>こちら“FANO”、あるいは>こちら “YEBACHL MEZEKIR”の録音を短期間に残し、欧州ツアーもこなした多忙な日々が続く中、2012年5月に47歳という若さでアジスの病院において謎の死を遂げたエチオピアを代表するアズマリです。その、短期集中録音4作のどれが最後の録音なのかは、定かではありませんが(本CDも没後のリリースと思われ)、最も遺作にふさわしい内容はと言えば、やはりオランダ TERP レーベルの 完全生音プロダクションによる “FANO” ということになるかと思います。が、アジス現地録音となる打ち込み入りの本作にしても、そのコクとメリスマに溢れる節くれだった歌声、ダンスを誘う軽快な変拍子グルーヴ、絡みつくようなマシンコの擦弦音と、捨てがたい魅力を放っているのも確か。何しろ、もう亡くなってしまったのですから、今後得難い歌声としてすべて聴きたいと思うのも人情かと。