マラヴォワとも交流のあるハイチのSSWによるシャンソン・クレオール!
著名な画家として知られたシャルル・オバスを父に持つハイチ人男性歌手ベートヴァ・オバス(1964年生)。ギターとアコーディオンを独学で学びプロとしてデビューを果たした彼は、マヌ・ディバンゴが審査員長を務めたコンテストで「ベスト・ヤング・シンガー賞」を受賞。その官能的な歌声とサウンドで広く注目を浴びた彼は、その後マラヴォワの『マテビス』(1992)にゲスト参加すると、その名前が世界で知られるようになった。そのベートヴァが2020年に発表した本作では、クレオール・ジャズを基調としたお洒落なサウンドをバックに、貫禄十分の歌声をリラックス・ムードたっぷりに聴かせてくれる。まさに〈ヘイシャンAOR〉と言いたくなるような良質で素晴らしいシャンソン・クレオールが堪能できる1枚! (サプライヤーインフォより)
●日本語による説明をつけた帯を商品に添付して発送いたします。日本語解説は同封しておりません。予めご了承ください。
1. Bon Bagay
2. Liberasyon
3. Ou La
4. Ponte de Pie
5. Pale Yo
6. Traka
7. DRA (Inspiré de Drão de Gilberto Gil)
8. Éclosion
9. Bio
10. Eleman
11. Oyapock
*以下、当方NHKラジオ小コーナーで本CDから2曲、ご紹介させていただいた際の台本原稿となります。
ハイチはカリブ海の島国です。
人口は約1000万人、公用語はフランス語と、フランス語から発したクレオール語です。19世紀初頭に世界で最初の黒人による独立国となったハイチは、現在も約95%の人々がアフリカ系の黒人の子孫として暮らしています。
けれど、ハリケーンや、地震といった度重なる災害から受けた傷跡が、今なお、人々の生活を圧迫し、なかなか立ち直れない中、諸外国の援助が続けられています。
また、そうした災害の傷跡に加えて、去年7月には、モイーズ大統領が暗殺されるなど、政治情勢や治安の悪化も大きな問題となっていることも、報じられもします。
そんなハイチから聞こえて来た去年の新作から、聴いていただきます。
「ハイチのヴェテラン・シンガーソングライター、祖国に捧げる静かな応援歌」
と、させていただます。
とりあえず、まず、一曲聴いていただましょう。
歌手の名は、ベートヴァ・オバス、
曲名は 「ボン・バガイ」
というわけで、ハイチ音楽はこれまで、何回かご紹介して来ましたが、いつもとちょっと違うな、と感じられたかも知れません。
まるで、ボサノヴァみたいな静かな、囁くような歌い口で、ハイチの古いフランス語歌謡スタイル、シャンソン・クレオール風でもあったし、キューバ系のラテン・リズムの繰り返しパートも聞こえ、途中披露したピアノのアドリヴ・プレイはジャズっぽいものでした。
なかなか一筋縄ではないその音楽性を感じていただけたんじゃないかと、思います。
その「ボン・バガイ」という曲名は、「良き人々」といった意味でしょうか?
いつまでも、助けを借りることはできません。
もちろん、私たちは隣人の助けが必要です。
でも、永遠に続く助けなんてありません。
行動を起こさなけれいけない。
なぜ彼らが私たちを支配しているのですか?
なぜ彼らは私たちの尊厳を踏みにじっているのですか?
目を見開きましょう、もうその時です、行動を起こす時です。
再びハイチが立ち上がるために、私たちは選択し、
決定しなければなりません。
私たちも価値はあります。
ハイチ人であることは貴重なことです。
良き人々です。
と、そんなことを歌っていました。
意外でした。
恋愛とかのことをムーディーに歌っているとばかり思っていたんですが…、
ともあれ、何かを訴える時、声を荒げて、叫べばいいってものじゃないですよね、
なんだか、こういう意味の歌をこういう風に歌ったら、かえって説得力があるのかも知れませんね?
どうでしょう。
このベートヴァ・オバスは、1964年生まれ、父親は画家、絵を書いていたそうです。そんな父は大の音楽好きで、ベートーベンをもじって、息子をベートヴァと名付けました。そんな父親はベートーヴァが4歳の時、当時の独裁的な政権への抗議デモに参加した後、行方不明になってしまったそうです。
が、消えた父親の名付けてくれた名の通り、ベートヴァは独学で音楽を習得、ギターやピアノを弾きこなし、作詞作曲を始めました。
24歳の時にフランスの音楽祭に入賞し、その後、90年代には、同じくカリブ海のフランス語圏の島、マルチニック出身の人気グループ、マラヴォワに参加して、カリブやフランスをツアーして周ります。
そんなキャリアが反映し、ベートヴァの音楽性は、ハイチ音楽のみならず、マルチニックのビギンのリズムや、フランスで活躍していたラテン系、アフリカ系、ジャズ系の様々な音楽家たちとの交友を感じさせるものです。
それではもう1曲、
ベートヴァ・オバスが歌います。
「ウー・ラ」
こちらでは、基本、マルチニックやグアドループといった、ハイチと同じくフランス語圏カリブの島々から生まれた軽快なリズム、ビギンをジャズっぽいアレンジで聞かせていました。
そんな演奏の中、相変わらず、静かなる歌声を軽快に聞かせてくれたベートヴァ・オバスでしたね。
その曲名「ウー・ラ」は、ハイチでは、“そこにいるよ” といった意味のようです。
荒れ狂う空、大雨の氾濫、悲しみが刻まれた顔、
子供たちはいつも空腹で、タイヤを燃やし、叫んでいます。
荒れ模様の空の下、暗殺者たちがうようよしいています。
この国はもう死にかけています。
そんな中、笑顔だけが救いです。
ダーリン、愛だけが救いです。
笑顔を見さえすれば、ボクは救われます。
ハニー、あなたがここにいるだけで、そこはオアシスです。
そんな愛でハイチを満たしましょう。
なるほど、そういう曲ですね、
まずは、笑顔から始めよう、ということでしょうか。
笑う門には福来る、って、日本にもそんな言葉がありますが、
ちょっと違うかも知れませんが、
でも、笑顔がなきゃ、ダメですよね、結局。