メルルとは黒ツグミ。黒くて見た目はよくないのに、えも言われぬ美しい声で鳴く。深い森に行かなくても 都市部のちょっとした木や林で昼夜問わずその美しい声を聞かせる。ビートルズ(マッカートニー)の「ブラックバード」に歌われた鳥です。フランスではからかうようなおしゃべり鳥として童話・童謡そしてシャ ンソン「さくらんぼの実る頃」に出て来ます。長身の美青年オーレリアン・メルルはそれを芸名にしたギター弾語りのシンガーソングライターです。かのアントワーヌ・ロワイエらと共同で設立したレーベル、ル・ソール(Le Saule 柳)の中心メンバーのひとり。既に4枚のアルバムと1枚の EP を発表しています。 このレーベルは全員が初期 SARAVAH(バルー、アレスキー、フォンテーヌ、イジュラン、マクニール…) のクリエーティヴでアヴァンギャルドなシャンソン作りをモデルにしていて、特にこのオーレリアンはピエール・バルーへの心酔ぶりが目立ちます。5枚目のアルバムにあたるこの『ルメルル(再びメルル)』は ジャケに、19 世紀末のスイスの象徴主義画家アルノルト・ベックリンの作品「牧神と黒ツグミ(メルル)」 をそのまま使っています。枝に止まっている黒い鳥がメルルです。この辺にもちょっとサラヴァ風な ハイブローな感じが伺えます。基本的にはオーレリアンのよくこなれたフィンガーピッキングのギターと、ムスタキ or スーション似の優しい声と歌唱のフォーキー・バラードが主軸ですが、アントワーヌ・ロワイ エ、レオノール・ブーランジェ、ジャン=ダニエル・ボッタ等ル・ソールの仲間たちが、さまざまなアコー スティック楽器とコーラスで介入してきます。繊細なアンサンブルです。レオノールのヴォーカルが入る ととたんに「フォンテーヌ&アレスキー」っぽくなります。 詞曲オーレリアン・メルルがほとんどで、詞はちょっと高尚で象徴的な叙情詩みたいです。3曲の詞が 40 年代 50 年代の無名の差し出し人による書簡(2013 年にオーベルヴィリエで開かれた無名書簡展示会から借用さ れた)で、絵ハガキに記された謎のような数行(5)、山岳(サヴォワ) 地方の女性がパリの(恋人?)医者にあてた山登りの様子を描写した支離滅裂な手紙(6)、そして 1945 年4月付け、沖縄に上陸したアメリカ軍兵 士が沖縄戦を戦いながらフランスにいる友人(女性)に宛てた手紙(狂信 者たちを打ち負かせば平和はきっとやってくる…)(10)。その他に敬愛するピエール・バルーの 1972 年アルバム『サヴァ・サヴィアン』の中の1曲 “80 AB”(詞バルー/曲アレスキー)の素晴らしいカヴァー 。ディジパック装。6月 15 日。(エクスポーター資料から)
1. CARREAUX TREMBLENT / 2. GRAND CERF / 3. APPEAUX ET APPATS / 4. GENIE / 5. VOYAGE SANS BRIDGE / 6. CHIC AUX BUISSONS / 7. LA FUGUE / 8. 80 AB / 9. LES GESTES INUTILES / 10. OKINAWA / 11. LA CONVERSATION / 12. LE REVEIL