いつの間にやらリリースされていたギリシャの若手女性歌手、アレッティ・ケティメの2013年作と思われます。ジャケには何やらレトロな出で立ちで佇む女性の立ち姿(アレッティちゃんじゃありません)、アーティスト表記はアレッティ・ケティメ、スターヴロス・パザレンジスと連名になっています。このスターヴロス某という人の家は代々クラリネット奏者を生業にして来たということで、祖父、父親から受け継いだ伝統的なクラリネット演奏をここで披露しているわけでが、この作では古いマケドニア民謡スタイルの演奏〜両面太鼓やフレームドラム、ズルナを交えた演奏を聞かせています(その “マケドニア” というと隣国のマケドニア共和国を連想されるかとも思いますが、ここではギリシャ北部のマケドニア地方ということになります)。というわけで、もちろんアレッティちゃんもマケドニア地方の民謡を淡々と歌っているわけですね、常よりも淡々と、ちょっと横揺れする感じのメリスマ使いを、いつものように透明な声質で披露しています。全23曲70分ということで、オーソドックスな民謡曲ばかり、3分前後の似たような曲が次から次へと続く感じが、淡々とした雰囲気に輪をかけています(テンポの違いがダンス曲とそうでない曲を分けるのでしょうが、旋律のあり方は似たような曲ばかりです)。曲によりユニゾンの男女混成コーラスがつくところもマケドニア地方民謡ならでは、ということになるんでしょう…。哀愁と諦観、そして土地の人情がじわっと滲むようなイイ雰囲気の曲が並んでいます。歌に寄りそうクラリネットも実にいいムードです。
スターヴロス楽団〜
Dimitris Side (lute, guitar), George Smyrna (acoustic bass), George Pazarentzis (tabor / 両面太鼓), George Kortsinidis (tabor), Costas Sarmpinos (ntarmpouka / フレームドラム), Ibraim Ibraimoglou (percussion), Dimitris Panagoulias (drums), Nick rags (trumpet), Romeo Avlastimidis (violin), Trifon Pazarentzis (zurna =ズルナ OR スルナイ / ダブルリード木管).
※ところで、アレキサンダー大王で有名な古代マケドニア王国の跡地は、現在、マケドニア共和国(=マケドニア旧ユーゴスラビア共和国)に40%、ギリシャ北部に50%、そしてブルガリアに10%と分断されているそうで、南方スラブ系人口の占める割合が多い(ほかトルコ系、ギリシャ系〜)マケドニア共和国の人々が “マケドニア人” を自称するのはおかしい、と、ギリシャ側がクレームをつけている、という現状があります。けっこう強行にもめているみたいです。ま、そんなことを言うなら、古代ギリシャの都市国家群と現在のギリシャにはあまり連続性はない、という事実もあるんですが…。世界中どこでも隣国同士って必ずもめてますね。ま、余計な話かも知れませんが。