ソウルフルな歌声とジャジーな音楽性で多くのファンを魅了してきたポルトガルの人気歌手がカーボ・ヴェルデとイギリスの繋がりを模索!
ソウルフルな歌声とジャジーな音楽性で多くのファンを魅了してきたポルトガル人女性歌手カルメン・ソウザ。本国で2017年に発表された『クレオロジー』(ライス GLR-8035)で日本デビューを飾った彼女は、2020年にはファンキー・ジャズのパイオニアとして知られるホレス・シルヴァーへのトリビュート作『ザ・シルヴァー・メッセンジャーズ ~ ホレス・シルヴァーに捧ぐ』(同 GLR-7185)を、2022年にはコロナ禍を経て新たな旅路への出発を示した『インターコネクテッドネス』(同 GLR-3099)を発表し、何れもヴォーカル・ミュージック・ファンから高い支持を得ました。そんな彼女が2年ぶりとなる新作を発表してくれました。
カルメン・ソウザは1981年ポルトガル・リスボンの生まれ。ただ彼女のご両親はかつてポルトガルの植民地だったカーボ・ヴェルデの出身で、70年代に起きたカーネーション革命の際ポルトガルに移り住んだのだそうです。カーボ・ヴェルデのクレオール語に親しみ、その郷土料理を食べて育った彼女は、幼少より教会でゴスペルを歌うようになり、後にブラジルやアンゴーラ、モザンビークといった他のポルトガル系の国の音楽(いわゆるルゾフォニア音楽)にも親しむようになりました。そんな彼女の才能に惚れ込み、公私に渡るパートナーシップを結んだのが、現在まで活動を共にしているベーシストのテオ・パスカルでした。テオとカルメンはバトゥーケやコラデイラといったカーボ・ヴェルデ音楽をジャジーなスタイルで演奏して注目されるようになり、2005年には“Ess nha Cabo Verde”でアルバム・デビュー。これまでに10枚のアルバムを発表してきた彼女は2013年には初来日を果たし、耳の肥えたコットンクラブの聴衆を唸らせる素晴らしいパフォーマンスを披露しました。
そしてカーネーション革命50周年となった今年にリリースされた本作は、カーボ・ヴェルデにおける英国の存在と脱植民地化闘争の知られざる物語を、カルメンならではのユニークなスタイルで歌った内容となりました。ご存知の通りカーボ・ヴェルデは74年まではポルトガルの植民地でしたが、かつてはイギリスも彼の地を経由して大々的に奴隷貿易を行っていたほか、20世紀初頭からはカーボ・ヴェルデからイギリスへの移民が急増していて、特にリヴァプールやロンドンなどの大都市にはカーボ・ヴェルデ人コミュニティを形成するまでになるなど、歴史的に太い繋がりがありました。またカルメン自身も英国に暮らしていた経験もあり、音楽を通じてカーボ・ヴェルデと英国との繋がりを掘り下げる試みを行いたいと考えるようになりました。
具体的には英国のジャズ・シーンで活躍する音楽家をゲストに招き、フナナーやコントラダンサ、モルナ、マズルカといったカーボ・ヴェルデの伝統的な音楽やリズムとの融合を図り、多層的なハイブリッド音楽をここに構築しています。そんな試みを指揮しているのは、これまで通りパートナーのテオ・パスカルで、彼が持つ多彩な音楽知識を駆使したミクスチュア・サウンドと、繊細な表現力を持つカルメンのヴォーカルとのアンサンブルを楽しませてくれます。もちろん全篇がアクースティックなバンド・サウンドで作られており、ジャズ・ファンはもちろん、この4月にリリースされたカーボ・ヴェルデの女性歌手ナンシー・ヴィエイラ『人々とのつながり』に代表されるルゾフォニア系音楽のファンにも響く内容です。
2024年の締めくくりにピッタリの素晴らしいヴォーカル・アルバムです。
●日本語解説/帯付き
1.St. Jago 03:50
2.Pamodi 04:47
3.Cais D’Port Inglês 04:36
4.Ariope! 03:25
5.Francis drum 03:36
6.Amizadi 04:40
7.Badju Mandadu 04:06
8.Moringue 04:17