SHARHABIL AHMED / THE KING OF SUDANESE JAZZ

1920年代以降20世紀の半ばにかけて、ハルツームほかスーダンの都市部で結婚式や祝祭、パーティーで歌われるようになったコール&レスポンス・スタイルのヴォーカル音楽に “ハキバ” (or ハゲーバ?>★)と呼ばれるスタイルがあったそうです。主唱者がタンバリンを叩きながら歌い、そのまわりを囲んだ復唱者たちが、手拍子でリズムを取りながらコーラスで歌うという歌唱スタイルで、いわゆるムスリムのスーフィー・チャントにかたちは似ていますが、世俗的なパーティー・ミュージックor ポピュラーな歌謡として流行したそうです。
そんなハキバの感覚をベースに、欧米のロックンロールやR&Bの音楽スタイル、あるいはカリプソ(ハリー・ベラフォンテ)や、コンゴ〜東アフリカの流行音楽の影響も受けて、モダンなポピュラー音楽として演じ、先陣に立ったパイオニアが、このシャーハビル・アハメッド (1935年生まれ、57年頃から音楽活動スタート)だったとのこと。もともとウードを弾き、金管楽器を手にしていたシャーハビルですが、何とかギターを手に入れたものの、チューニングがわからず、とても苦労したというようなことが、本CD付属の18Pのブックレットに細かに記されています。そして、60年代以降、往時には、シャーハビルに続くスダニーズ・ジャズのバンドは、50以上も活動していたそう。先に復刻された>スコーピオンズは、シャーハビルから数えて4番目に結成されたグループだったとのこと。
ところで、そのシャーハビルに冠された“スダニーズ・ジャズのキング”という呼び名は1970年代初頭に行われたスーダン国内のコンペティションで優勝して以来彼の呼称として定着した通称だそう。で、勿論この場合の “ジャズ” は、コンゴのOKジャズやタンザニアのタボラ・ジャズといった他のアフリカ諸国で言うところの “ジャズ” と同じような意味で、”ジャズ” そのものを指すわけではなく、欧米経由のポピュラー音楽の演奏スタイルを吸収したバンドサウンド一般を意味する、とでも解すべきでしょうね。
そして、その内容ですが、その演奏スタイルにおいて、エチオピアのハイレ・セラシエ近衛兵バンド以降のエチオ・グルーヴ初期音源に似ていることは確か(ブラスは少人数ですが)。加えてそのアラビア語スーダン方言による歌のあり方は、けっこう軽やかな歌い口ですが、やっぱりスーダン音頭っぽいんじゃないかと? アラブ風にコブシまわしを強調することはしませんが、ハキバに由来するのでしょうか、スーダンらしさを随所に感じさせるメロディーを辿って軽快なダンス音楽、というかR&B、ロックンロール以降の洋楽に呼応した演奏になっていますね。
ということで、北東アフリカ大衆音楽の貴重な音源、スーダン・モダンPOPの真打ち登場というこの復刻盤なのですが、なぜか、録音データが明記されてなくて、いつ頃の録音だかわかりません。その辺、ちょっと意味不明なんですが、音の雰囲気から察するに1960年代から1970年前後ぐらいの録音、と、思われるのですが、どうなんでしょう?
>★こちらでも紹介されています(陳謝&感謝)!

1 Argos Farfish 4:38
2 El Bambi 5:25
3 Malak Ya Saly 6:33
4 Kamar Dawa 5:17
5 Zulum Aldunya 4:48
6 Aziza 6:33
7 Ya Shagini 9:25

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