YASEEN & PARTY

”Yaseen & Party”アフロ7から発売された”Yaseen & Party”が面白い!by 深沢美樹さん
(深沢さんの FACEBOOK から無断転載!〜ホント、どーも、すみません!)

★このアルバムの主人公ヤシーン・モハンマドは、いわゆるターラブのアーティスト。オマーンにルーツを持ち若い頃はイギリス陸軍に加わり電気技師、機械工としての技術を身につけていたという。
ケニアのモンバサを拠点に40年代後半からコロムビアに録音を始めていたようで、50年代初頭にナイロビのジャンボ・レコード、さらに50年代中頃モンバサにンズリ(Mzuri)レコードが設立されると録音技師、タレント・スカウト、アーティスト、伴奏バンドとして、このレーベルに深く関わった。
Yaseen Orchestra、Yaseen&Party、Kasanga Party、Mac&Party、Yaseen & Mimiなどの名義で60年代半ばまでレコードをリリースしている。今回、復刻されたのはンズリ・レコードの録音で、50年代半ば頃のものから60年代初頭の時期にあたる。
フィジカルとして発売されたLPは12曲が収録されているが、ダウンロードではプラス9曲の全21曲が聞ける。もちろんLPにはダウンロードのパスコード付き。
初期の割とオーソドクスなターラブも良いが、断然面白いのがラテン調のナンバー。他にも’Hi-Life Mambo’ や’Afrika Twist’ なんてのも。このあたりの感覚は例えばデイヴ・バーソロミューのラテン調ナンバーの面白さに通じるかな。
しかし、のけぞったのは’Livepool’という曲で恐らく62〜63年頃だと思うが、これはビートルズに代表される、いわゆるマージービートを意識しているのは明白。いわばターラブによるリヴァプール・サウンド!

★前回投稿で聞いて頂いた ‘Livepool’ いかがでしたか。途中でガレージ調のエレキは入るわ、「ギャー」と掛け声はあるわ、いわゆる伝統的な香り高いターラブの概念から大きく逸脱した、しかし、そのポップ感覚がぼくには非常に面白く感じました。

ターラブという音楽に出会ったのはいつだったか、もうハッキリ覚えていませんが、オリジナル・ミュージックのLP “Songs The Swahili Sing”(83年)かフォークウェイズの “Music Of The Waswahili Of Lamu, Kenya “(84年、3枚セット)あたりだったかな。
ちょうどその頃、84年にケニア、ナイジェリア、ガーナを訪れたんですが、ナイロビでは小編成のターラブのバンドの演奏をテレビで興味深く見た記憶が残っています。
その後グローブスタイルからターラブのシリーズが発売され、91年には「東京ムラムラ・デラックス」というイベントで本場ザンジバル島のグループ(ザ・ミュージック・オヴ・ザンジバル)が来日。彼らが演じたアフロ・ラテン風なナンバーも面白くて、いまだに印象深く覚えていますね。
その後も様々CDやカセットなどを入手して伝統的なスタイルにも魅力を感じていますが、同時にターラブもまた時代に対応した側面がある事も理解していました。しかし、正直この今回のヤシーンほどの衝撃を受けた事はありません。
単に流行りの洋楽をカヴァーしたと言えばそうなのですが、アラブ、インド、アフロ感覚が複雑にミックスしたスワヒリ文化を象徴するターラブですが、さらにラテンからツイスト、ロックまでこだわりなく消化する。その大衆感覚の思うがままに伝統を突き抜けた、こだわりの無さ、ミックス具合が面白くて堪りません。
そこにはターラブたる音楽性があり、その上での突き抜けたアプローチですから表面的なゲテ物とも違うんです。
自分も東アフリカ関係のSP盤はコレクトの対象にしていて、実はヤシーンのSP盤も何枚か手元にあります。ラテン風ナンバーなど面白いものもあって、それなりに彼のユニークな所は感じていたんですが、正直ここまでの面白さは知りませんでした。
今回の復刻、そのSP時代も含みますが、やはり60年代のシングル時代に彼の面白さが全開になったと分かります。この時期は自分も把握していなかっただけに、まさに目から鱗なのでした。

◆補足 仏Buda Musiqueのザンジバラ2でもヤシーンが何曲か聞けますので、興味ある方は併せてお楽しみを。