TIGRAN HAMASYAN / MOCKROOT

tigran-hamasyan-mockroot-rev-450x400ミュージックマガジン2015年1月号でも、今年注目の音楽家として取り上げられていたアルメニアのピアニスト、ティグラン・ハマシアンの2015年新作は老舗ノンサッチからリリース。昨年秋に行われた来日公演と同じ、ピアノ・トリオ編成を基本に、前作「シャドー・シアター」にも参加していた女性歌手をはじめ、数名のゲストが加わったもの。ピアノ・トリオと言っても、ドラマーはエレクトロニックパッドを用い、ベースはダブステップ並に低音を鳴らし、ティグランはプリペアド・ピアノからシンセ、ルーパーまで用いて、アルメニアの妖しくも郷愁あふれる旋律を奏でる。

本作制作前に、ティグランは民謡や詩を掘り下げるため長期間アルメニアに滞在した。そのためか、19~20世紀のアルメニアの詩人が書いた詩を元にした曲が大半を占める。かつてのアルメニアの首都であり、現在はトルコの町「カルス」の名前が付いた2曲は民謡を元にしている。この町はグルジェフが暮らしたことや、トルコ人作家オルハン・パムクのノーベル賞受賞作「雪」の舞台としても知られている。一世紀前のアルメニア人虐殺の現場でもある。