☆キング・アイソバ『ウィケッド・リーダーズ』
解説:深沢美樹 / EL SUR Import-104
ハウリン・ウルフ?それともマハラティーニ?フクウェ・ザウォーセ?今ガーナで “未来の民俗音楽”と呼ばれるその音楽性、2弦のコロゴをカキ鳴らし、ダミ声ヴォイスでシャウトするこの男キング・アイソバ、久々のアフリカ音楽大物登場!?
ガーナ北部に住まうフラ・フラ人として生まれ、フラ・フラを代表する弦楽器、コロゴの弾き語りを演じるキング・アイソバ。ガーナの流行音楽ヒップライフ(=ハイライフ+ヒップホップ)を経由して、コロゴ・ミュージックに回帰し、“砂漠のブルース”〜“マリアン・ブルース”のさらに南、”サハラ交易文化圏” 最南端のブルースを、ヒップに体現します。アフロビートも伝統音楽も等価に飲み込むそのヴァイタリティー溢れるネオ・トラディショナル・ミュージック、お聴き逃しなく!
本邦初入荷!深沢美樹さんに教えていただきました。ということで、充実解説を深沢さんに書いてもらって当方より国内配給盤のリリースです。〜今年のアフリカものでは当店的には既に最高傑作と断言しちゃいます(んなことばっかり言ってるような気もしますが…)。お見逃しなく!
というわけでキング・アイソバ、実は>こちらガーナのヒップライフ・コレクション “BLACK STARS” 2CDにファースト・ソロ作からの曲が収録されていた人ですね。1975年ガーナの北部、ブルキナファソの国境近く、ボロガタンガに生まれていますが、この辺はブルキナファソの南部から住まうフラ・フラ(Fra Fra)と呼ばれる人々の土地です。そのフラ・フラの代表的楽器、コロゴ(Kologo)と呼ばれる2弦のリュート型弦楽器をアイソバは弾き語ります。
3歳になっても立って歩けなかったアイソバを両親がいろいろと心配し医者やメディシンマンに見せたり相談してもまったく効果がなかったところ、ある占い師にから、コロゴを与えよ、この子は果てしないパワーの持ち主だ。そのパワーは楽器を必要としている、とかなんとかお告げを授かって、その通りにしたところ、小さなコロゴを抱え、すぐに立って歩くようになったアイソバだそうです。ま、そういうことも、きっとあるでしょうね、この世には。
90年代に入って、コロゴを携えガーナ最大の都市、アクラへ出たアイソバはラッパー、テリー・ボンチャガとグループを結成、00年代にかけてヒップライフ最高の人気グループのコロゴ奏者&作曲家となるわけですが、テリー・ボンチャガは自動車事故で亡くなり、その後はソロ活動に入ったアイソバでした。そして07年にはデビュー作を発表、08 / 12年にセカンド&サード・アルバムをリリースし、ガーナのみならず欧州でも活躍するようになったわけです。
なんでこれまで日本のアフリカ音楽ファンの間で知られることがなかったか、反省の意味もこめて遅かりし紹介かも知れませんが、ガーナ時代の現地盤は入手困難、2013年には MoBlackなる欧州エレクトロニカ・ユニットとの共作も出ていますが、これはちょっとアイソバの、そのヴォイスとコロゴがサンプリング的に利用されてる感じなので、ともかくとして、このソロ4作目で初めてアイソバに出会うことができたのは、ある意味、僥倖かも知れません。
というのもこの4作目、ヒップライフ色はピジンイングリッシュ歌詞の歌に見られるぐらい?どちらかと言えばブルキナファソ、ひいてはマリにも繋がって行くようなマンデ系音楽に親近性を持つフラ・フラの音楽性に忠実な作であり、コロゴ&ザイロフォン(木琴)、そしてドオ(Doo)と呼ばれるナチュラルホルン状管楽器&トーキングドラムやジェンベ、シェケレ風の各種打楽器による演奏もどこかブルージーです。そこに時にハウリン・ウルフやマハラティーニやフクウェ・ザウォーセを連想させるような強力無比パンキッシュなキング・アイソバのヴォイス&ヴォーカル(個人芸?)が加わり(ザウォーセが七色の歌声ならアイソバは五色の歌声ぐらい?)、コーラスやトースティング、ラップ、語りや会話、早口言葉?も交え、変化に富み入り組んだコンビネーションを聞かせるその歌のあり方において、アフロビートにも共通するようなピジンイングリッシュとフラ・フラ語による風刺、メッセージ性濃い世界を繰り広げます(と、思っていたら、「朝になって囲いを解かないから、草が食べらんなくて、ヤギや羊がメーメー泣くんだよ、囲いを解けよオメー」なんて、歌も…、深読みしようにもできない歌詞ですな)。
そんなわけで、ガーナという国の流行音楽にとらわれることなく、自らの成り立ちを示す民俗的な編成を持った作でありつつ、キング・アイソバの個人芸、メッセージ性とともに、パーソナルなアルバムとしても聞こえて来るヴァイタルこの上ないこの作、この男の魅力を遺憾なく発揮したアルバムであると確信できます。しばしば、北米ギター弾き語りブルースにとても近いと指摘されるコロゴ・ミュージックですが、そんな弾き語りを主軸に録音されたこの作、まずはここから、聴いていただいてOKです。オススメできます!
1. 集まれ!
2. ウィケッド・リーダーズ
3. 真夜中
4. 選挙の歌
5. アコルビレ
6. ンべー
7. アサーラ・ダーンデラ
8. 寝るな!
9. 神さまに乞う
10. 平和の歌
>ファースト、セカンド、サード・アルバムからのベストLPも入荷中!